2022年04月30日

テスカトリポカ(煙を吐く鏡)佐藤究

音楽に例えるならばデスメタル
この165回直木賞と第34回山本周五郎賞·受賞作品を一言で言い表わすとしたら、そんな形容がぴったりかも知れない分厚い一冊です。

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川崎、ペルー、メキシコシティー、ジャカルタと舞台も登場人物も目まぐるしく入れ替わるものの、その背景には麻薬販売に携わる闇社会が見え隠れする。

ジャカルタの街で、親類縁者を皆殺しされた元麻薬密売組織の大ボスと医療界を追放された闇石が出会う。
この2人が手がけることになるのが麻薬よりもっとイイ身入りのビジネス=臓器売買だった。

オリンピックを前にホテル不足解消の一翼を担うクルーズ船需要を見込んで、超大型のクルーズ船が建造されていた。船内には常駐医師と本格的手術も可能な医療設備を併せ持つ予定だ。東京湾で接岸できる場所は川崎のコンテナターミナル.こちらも受け入れのための整備が急務だった。


この作品が執筆された頃はまだ無観客での五輪開催など想像もつかなかったことだろう。
事ほど作用にコロナ禍は文学作品にも結果的に大きな番狂わせを及ぼしている。

横浜港に接岸したクルーズ船内でコロナ患者の押さえ込みが必至に演じられているた光景がふと思い浮かびます。
予定通りに五輪が開催されクルーズ船がひしめき合っていたらひょっとして?
所詮は絵空事のフィクションですがあまりにもリアルな描写にあれこれ妄想が膨らんでしまいそうです怖い一冊です。

| 10:31 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦


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