去年10月のインドネシア=ライオンエアの墜落事故の原因も何とかわかりかけてきたというのに、737最新鋭機の事故がまた起きてしまいました。エチオピア航空の同型機737-MAX8が離陸後6分という短時間に墜落、大破して全員死亡という悲惨な結果に。事故の原因として浮上したのがAOAセンサーによる自動失速防止装置(MCAS)の誤作動、つまりプログラムミスの可能性が高まってきました。
事故を受けて中国航空当局は20機以上を納入している中国各社に飛行停止を命令、これに続いてEUも域内の飛行のほか、他国からの乗り入れも停止しました。中國以上にユーザーの多いアメリカでもFAAが当面飛行を許可しないと発表(水曜日)。事故原因解明を続けるそうです。
日本にはまだ、納入済の会社はありませんが韓国から乗り入れているLCCの中には、自主的に飛行を中止した会社もあります。
ボーイング737は初号機から世界で14000機以上が売れたベストセラー、初代の設計は1960年代に遡り747よりも数年早くデビューした機材としては異例の長寿商品です。デハビランドコメットや727のような初期故障に起因する重大事故※の例もなく、それだけに信頼性も厚いはずが。もちろん50年の間にはさまざまなアップデートが施され、エンジンやコクピットはじめ最新の装備が施されているのも事実です。が、今回のような制御システムに起因する初期トラブルの類は聞いたことがありません。
機体の設計に起因するトラブルではなく、操縦を制御するコントロール系のトラブル・・・・まず思い起こされるのは1994年の中華航空機事故です。自動操縦をエンゲージしたままパイロットが操縦かんを前に倒し続けたため、プログラムは機首上げを実行、機体が失速に至ったあの名古屋空港の事故です。
事故原因として、パイロットの習熟不足が挙げられましたが、そもそも人間の意志に反して制御をおこなうプログラムが完璧なものなのかどうか?という理屈は当初、二の次の印象でした。
今回もあの時のような失速事故を防ぐために考えられたシステムのはずですが、プログラムに与えるべきデータが誤っていた疑いがあり、こうなると飛行中のパイロットでは手に負えなくなる可能性すらあります。
自動操縦に頼らなかった昔のパイロットには理解できない事故のメカニズムですが、ひるがえってこれから実用化されるであろう自動車の自動運転の制御プログラムで、同じようなミスがあったら許されません。開発陣には納期を遅らせてでも完璧な仕事を完遂するべく、慎重を期してほしいものです。
※デ・ハビランド コメット=世界初の商業用ジェット旅客機として華々しくデビューを飾ったものの、機体の金属疲労による空中分解が頻発して表舞台から姿を消した。
ボーイング727も登場直後、自慢の高揚力装置(フラップ)を活かした急下降がエンジン吸気に支障をきたし、着陸進入中の事故が連続したため、降下率の制限を設けた。全日空機の羽田沖事故(1966)もこれに起因する事故と考えられている。