2022年05月15日
小説・宝島
沖縄が日本に返還されて50年。その沖縄の戦後を舞台に描かれたフィクション;第160回直木賞受賞 第9回山田風太郎賞にも輝いた真藤 順丈の長編小説が「宝島」です
舞台は返還前の占領地;オキナワ、ムショ暮らしっだったゴロツキ二人と、飲食街で働く若い娘にとってのヒーロー、「アニキ」はどこに消えてしまったのか?ウチナンチュの英雄と呼ばれたオンちゃん(アニキ)の足跡をたどって戦後・沖縄の若者たちの生きざまを描いてゆきます。
作者の真藤さん、実は沖縄の人ではありません。巧みな言葉遣いや沖縄ことばは全てがリサーチと現地から持ち帰った膨大な資料のコピーと史実の山があっての事。フィクションながら実在の人物、事件などが詳細に織り込まれ、沖縄を物語るドキュメントとしても読みすすめられる力作です。
たとえば6月30日に当時の石川市で実際に起きたF100戦闘機墜落事故の描写では授業中の小学校に墜落して多数の犠牲者を出した事故の様子がありのままに描かれていますが、当時のこの模様を知る人も、それを伝える報道もあまり目にすることはありませんでした。
アメリカの統治下にあった時代の沖縄、そこで若者たちが、オジイやおばあ達が、どんな空気の中で暮らしていたのか。沖縄のさまざまな出来事を背景に描かれた光景を若者たちの目を通して見事に描いていきます。
仲間たちとはぐれたままずっと消息不明だったオンちゃん、海の底に沈んだと思われていた彼が生きている?それとも誰かが英雄を語って・・・・謎解きの要素も含みながら沖縄の戦後史、青春ストーリーの要素も併せ持った大作。沖縄をもっと知るためにも是非とも一読をお勧めします。