2020年10月29日

美しかった彼女たち

瀬戸内に浮かぶお椀を伏せた形の小さな島、陽光が煌めく水面に降り注ぎ、高い空を鳶が大らかに滑空する。ある朝小さな命がここで産声をあげる。

ところ変わって夜景の美しいお台場のタワーマンション、裕福な暮らしを営む夫婦は、不妊治療に余念がなかったものの念願の我が子とフツーの日々を送っている。

菅総理の所信演説にもあった不妊治療に焦点を当てたのが河瀬直美監督の最新作「朝が来る」、この問題を正面からじっくりと捉えた作品。でもそれだけではなくあらゆる年代の女性たちをありのままに美しく捉え、傷つきやすい女性たちのデリケートな側面を緻密に描き、小さな島に残された自然の躍動感と合わせてビジュアル的にもとても美しくまとめています。

主演の永作博美が美しく歳を重ねている姿を、余すところなく画面一杯の大写しで表現するのは勿論、デビュー当時は歌も演技もド下手だった隣のミヨちゃんこと浅田美代子が、重要な役どころをこの世代としては希少なベテランらしく自然に演じています。

キャスティングもまた、ビジュアルに耐え得る素敵な女性たちを選んでいる反面、実際に養子縁組を経験した家族が役者に混じってリアルに感想を語るシーンも織り交ぜられていて、あたかもドキュメンタリーの一場面のように見えるところが河瀬監督ならではの手法です。

女性の描き方、自然なリアリティーのある演出、河瀬監督にしか撮れない映画の魅力で溢れている作品す。ルノーが車両提供を担い、黄色いカングーやメガーヌが効果的に登場するところなんか見事にストーリーにハマっています。


そして終盤の思いもかけない展開の後でどういう結末に結びつくのか?これは最後のワンシーンまで予測ができませんでした。本当に最後の瞬間まで見逃せない、久々にじっくり見応えのあったオトナな映画で、大混雑の他所のスクリーンの様に密の心配もせず楽しめるところもオススメ・ポイントです。


TOHO系ほかで上演中

| 15:32 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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