2020年08月02日
海辺の映画館―キネマの玉手箱
数々の大林作品の舞台になった尾道の小さな古い映画館の最終興行、オールナイトで上映されるのは日本の戦争映画ばかり、という設定で始まる今回の作品。昭和20年をシリアスに描いたラスト一時間の長い長い前振りが前半の2時間という見方も出来ますし、ハウスの様なとびっきりブッとんだ大林映画のショーケースの様でもあり、監督の遺言の様でもあり、この映画が評価されるのに50年や100年かかってもおかしくはない、くらいの深い見応えです。
スクリーンの中で誰も真似のできないエンターテイメントを繰り広げる、そんな手法はテレビ創世期の夢で会いましょうやシャボン玉ホリデーのタッチを思い出させます。
戦時中のエピソードや映画にまつわる小ネタの数々、きっと大林監督が映像化して残しておきたいものをヴィジュアル化したんだなあって思います。
武田鉄矢の坂本龍馬も片岡鶴太郎の千利休も見事なハマりっぷりですが、豪華な友情出演は他にも山ほど!女優のキャスティングも成海璃子、中江有里、山崎紘菜を選ぶあたりに個人的には共感を覚えます。
監督のラストメッセージの様にも、尾道最新作の様にも見えて実のところ話は原爆投下目前の広島市へと向かって行き...
結局のところ、戦時下の沖縄から被爆後の広島まで昭和20年を描いた後半の一時間だけでも、目に焼き付けておいて欲しい秀作でした。