2017年05月12日
開局前夜1
先の大戦※1で開戦の一報を伝えたのも終戦の勅語を国民に知らしめたのも、全てラジオ放送でした。それまでは、新聞で少なくとも数時間遅れて伝えられたニュースが即時に全国に伝わる!という画期的なメディアでした。
そのラジオ放送の黎明期の電波はAmplitude modulation (AM)方式が今に至るまで使われています。音の強弱を電波の強弱信号に変えて発信。受信するにはこの電波の強弱を検知して真空管やトランジスタで構成された電気回路に流してブーストさせ、電流の強弱をスピーカーの振動の強弱に置き換えます。
再生される音のうち周期の短いものは高音、長い周期なら低音で振幅の大きさは音の強弱に変換されます。・・・・が、高域の音ほど途中でかき消されてしまい、中低音が強調された音質になってしまうのが泣き所
日本では60年代に試験放送が始まった「Frequency Modulation」FM(=周波数変調)は電波に載せる信号の振幅を横波ではなく進行方向に振幅する縦波(地震で言うところのP波)に載せた方式です。つまり振幅によって周波数が微妙に変化するということ。これなら高域もしっかり再生されて、音楽もレコードやCD並みの音質が楽しめるようになりました。日本では70年代に民放4局が開局、その後各県域放送も始まり、キー局も複数に増えました。
テレビの電波が赤道上空の静止衛星から発射されるようになると、これまでにない方式のラジオ放送の試験が始まります。PCM(パルスコード・モジュレーション)と名付けられたこの方式は今までとは全くの別物。振幅の強弱信号を1と0の信号だけに羅列して高速度で送信します。受信位はマイクロプロセッサーと呼ばれる高速の計算機が必要で、もはや中学生が秋葉原で部品を買ってきてハンダ付けで自作出来るレベルではなくなりました。(集積回路の自作、製造は中学生には無理です)
地デジの電波も理屈はこれと同じ、受信してから演算、アナログ信号変換など高速で処理しなければならないことが多く、もはや時報をテレビ放送でオンエアすることはできなくなりました。
学生時代、アキバでFMトランスミッターの組立回路を千円位で買ってきて、これを数組、合宿中の男子部屋に配っては真夜中のアヤシイ生中継を楽しんだものでした。面と向かっては話せないアブナイ話題や、気になる女子の噂話・・・・音声通信だからこそ出来る放送の魅力を噛み締めたものでした。
深夜放送がブームだった時代、個人の投稿が広く一般に行き渡ることが出来たのは今のSNSや人気サイトの役割にもある意味似ています。インターネットの普及で個人が世界に向けて発信できる今の時代、放送のあり方ももう一度考え直す必要があるのかもしれません。
※1(・・と言っても遥か70年以上も前のことで、こんな言葉が通用するのは日本くらいのもの・・・・・米は勿論、英国だってフォークランド紛争という名の戦争当時国でしたから)