2016年11月22日
あれから50年
1966年秋、初代カローラがデビューした時(1966年10月)のインパクトは想像以上のものでした。この年すでにサニー1000やスバル1000をはじめファミリア、コンパーノベルリーナといったリッターカーが市場に溢れていた中、後出しじゃんけんで確実な勝利を狙うトヨタはエンジン、ボディとも新設計したばかりか生産工場も新たにゼロから立ち上げるという巨額投資で臨んだものです。おまけに発売当初から月産1万台以上を目論むなど、その大博打ぶりには今さながら驚かずにはいられません。
では、この新参者の新型大衆車はどこがライバルたちと違っていたのか...マーケティング的に見れば差別化、プチ高級化という付加価値を与えたことがライバルたちにない特色。アメ車の流行に倣ったベンチシート、コラムシフトがデファクトだった当時に全車セパレートシート、フロアシフトというスポーティーな運転スタイルを大衆車に持ち込んだことが画期的でした。エンジン排気量も、直前にサニー1000が発売されたのを見据えて急遽100ccアップの1100㏄エンジンに仕様変更しましたが、このことがちょい贅沢感をうまく演出しています。排気量の数字だけで車格まで上に見えてしまうマジックはのちにマークⅡ1700などでも反復されます。差別化戦略はほかにも上級グレード「ハイデラックス」の追加やクーペボディのスプリンター登場など、その後のトヨタのマーケティングにも大きな影響を与えています。
大雑把に言って日本車の10パーセントはカローラ、㈱カローラ自動車工業として単独でも成立するくらいの規模を誇りますが、発表前にここまでの成功を確信していたとは驚きです。
写真のモデルは発売翌年のマイナーチェンジを経た第二次モデル。計器盤回りも最新の安全基準を取り入れたクラウン似のクラッシュパッド入りの斬新なデザインに変更されスィッチ類も衝撃吸収可能なコラプシブルタイプに変更されます。4ドアやバンが追加されたほか、コラムシフト車も登場します。前述のとおりこの時代はコラムシフトの全盛時代、市場の要請にこたえたのかもしれませんが、後にも先にも後輪駆動カローラでコラムシフトが存在したのはこれ一代限り。カローラ50年の歴史の中でも極めてレアな逸品です。