2015年02月14日
久々の「家族」
「家族」というタイトルの映画、山田洋次監督が1970年に撮影したある種のロードムービーです。長崎、西彼杵の炭鉱から北海道、道東の中標津に移住する家族の物語です。初めて見たのは中学生の時、学校で無理やり鑑賞させられたようなものでしたが、転校生の経験が多かった自分にとっては、あまり楽しい映画ではなかった印象があります。以来10年、20年、40年と時間を重ねて、何度か改めて見直してみると、この映画の今まで気づかなかった魅力にハッとします。
貧しい家族五人が北海道の地にたどり着くまでの厳しく長い長い道のり・・・・もちろん長崎空港も当時は着工前でした。当時も斜陽産業だった炭鉱は日本から姿を消し、大阪万博の賑わいも今では語り草、1970年当時の社会情勢、物価水準、それに国鉄路線を走る列車の懐かしい映像。時間をおいて見れば見るほどこの映画の魅力を再発見できます。
山田監督がこの作品を撮ったのは男はつらいよシリーズ第1、2作のすぐあと。前田吟、渥美清も姿を見せています。主役は井川比佐志と若き日の倍賞千恵子。あの「さくら」があまりにも若くて華凛なことに驚かされます。父親役の笠智衆も寅さんシリーズではおなじみの存在、若い家族とともに長崎から北海道への長旅に付き合います。途中、万博会場に寄り道するくだりもあって当時の熱狂ぶりと人の多さにも、とても懐かしさを感じます。(会期中はほぼ地元住民だったから)
長崎、彼杵周辺にはやがて長崎オランダ村が生まれハウステンボスへと発展していきます。ジャパネットたかたの本社・佐世保も近い場所。一方、中標津からは鉄路が消え、北海道も札幌への一極集中が顕著に。20年前と比べても随分その違いが顕著になった日本の東と西の端。彼杵と中標津、どちらもここ20年好んで数回づつ旅した懐かしい場所ですが、いずれもこの映画の舞台だと知ったのはつい最近のことでした。
新しい仕事を求めて北海道に入植する家族の物語、今では語り草のストーリーかもしれませんが高度成長期だと思っていた70年に、こんな家族像があったんだなあと、認識を新たに懐かしい昔の日本をしみじみと懐古できる名作です。