2014年10月03日
昭和の名機・デンスケ
新幹線の開業、東北では1982年の盛岡開業が最初でした。東海道/山陽に遅れること10年弱、それでも最初の頃は毎時発車のやまびこ号は羨望の的、指定席獲得は数年間も困難を極めました。そんな開業日の6月23日、新米取材記者の私はラジオ取材用に録音機「デンスケ」を肩に、朝から取材に勤しんでおりました。
当初はゼンマイ動力で動いたと伝えられるデンスケ、さすがにこの時代は電池駆動でしたが、重たい単一電池が6、7本。5インチのテープはワンウェイで15分のキャパしかありません。この時代の録音再生装置といえば6mm幅の磁気テープ、それもオープンリールを使っていたので、取材もこのテープを使います。編集でハサミを入れて切ったり貼ったりしたので、VTR編集よりもある意味スピーディーでもありました。
さて、ワンウェイとあえて書き添えたのには訳がありまして・・・・・
取材済みのテープと未使用の生テープは外見上全く違いがわかりません。もちろん再生して音を出してみればすぐ分かることですが、いちいちリールを架け替えて、ヘッドにテープを通し、再生ボタンを・・・・そんな労を惜しまなきゃよかったのに、と思ったのは取材を終えて帰社したあとになってから・・・・
そうです、録音済みのテープをまた反対方向から取材テープとして使ってしまい、最初の取材分を上書き消去してしまったのでした。
家庭用のテープレコーダーでは普通トラックを往復の二つに分けて裏表で使えるので、こんなトラブルは起こりにくくなります、がワンウェイでトラック幅の全てを使う放送用、横着すると結局無駄足を踏むことになる・・・・新人時代の貴重な教訓でした。
録音機材もDAT、MPEGレコーダー、ミニディスク、と変遷を経て、メモリーオーディオが当たり前の現代、素材をメールに添付して現場から局に送るという夢のような離れ業も当たり前のように使えるご時世、重たい重たいデンスケは、今や遠い思い出と共に会社のメモリアルコーナーに静かに眠っております。