2024年04月26日

オッペンハイマー(文庫版)

まだ読 み終えていませんが、映画でも話題のオッペンハイマー
なにしろ文庫版でもたっぷり上中下三巻の圧倒的ボリュームです。
とりあえず一気に3冊も買うではなく、中巻の中ほど、1930年代の原爆開発前夜あたりから読み始めました。

アメリカは国をあげて原子力爆弾という未知の最終壁開発を始めます。物理学者だったオッペンハイマーはこの大プロジェクトの総責任者を命ぜられニューメキシコの誰もいない広大な土地に科学者らの住む街と実験場、その他必要な施設を築いて秘密の保持に万全の対策を取ることを求められます。
当時、ドイツもソビエトも原爆を開発中との噂が。アメリカとしてはいち早くこの新兵器を完成させ、ドイツとの戦いを終わらせなければなりません(と考えます)
さらにはソビエトに先を越されることのないよう、一刻も早い完成が望まれたのでした。

しかし1945年にドイツは降伏。あとは原爆の破壊力をデモンストレーションして、これが戦争終結に必要なツールであることを証明せねばなりません。ソビエトよりも先に・・・
残す戦場は、太平洋の向こう側ニッポン・・・・・完成間もない原爆を炸裂させて戦争を終わらせる・・・・・・既成事実が欲しかった。

ドイツ戦に間に合わなかった新型の爆弾はすでにポツダム宣言受け入れの意向を示していたと言われる日本の上空で、見事にその圧倒的な威力を世界に見せつけます。
この瞬間からオッペンハイマーの顔から笑顔は消え失せました。大勢の一般市民が焼け死ぬ光景は想像こそしていたものの、現実として見せつけられると成功を喜ぶ気にはとてもなれません。

原爆の最大の欠陥はそれを防御する手段がないこと。ひとたび手にしてしまえば軍拡競争が避けられないもの、と考えていたオッペンハイマーは完成前から情報の開示、共有、ソビエトほか大国との間で国際的な管理期間を設けて無用の競争をやめさせようと提案していました。
この考えは大統領にも直接手紙で伝えられますが、米政府の指向は必ずしも博士が考えた理想論とはかけ離れたものでした。

・・・・・・・ここから先はこれから読み進める部分ですが、政府、FBIはオッペンハイマー宅にも盗聴器を仕掛け、共産党員との繋がりをあれこれ探り出し、彼がロシアに密告を企てるスパイだと主張するようになります。

まだ3冊のうちの2割ほども読んではいませんが、とにかく綿密な取材は徹底していて、彼と関わりのあるほとんど全ての人に取材したかのようです。
映画では(まだ未鑑賞ですが)本人の主観的視線から語られているようですが本書では、あくまで客観的事実を列挙し、筆者の主観なり推測は極力排除されています。
そんな中からも、政府側の意図と科学者の危惧との乖離があぶり出されてゆく・・・・政治ドラマとしては、この中巻の終わりから下巻あたりが一番の見どころかもしれません。
下巻まで買って読み進めるか否か?それは、この先どう展開するかにかかっていますが、さて
複雑で難解な3時間の映画を見にゆくのは、もう少し読み進めてからになるでしょうか??

| 08:21 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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