2023年06月16日
professional高倉健さん
高倉健といえば昭和、平成を通じた日本の代表的な俳優
ですが、年代ごとにその代表作もまた違ってくることでしょう。
この度、ご縁があって養女の小田貴月(おだたか)さんが著した 高倉健・最後の季節を読みました。
病気急変から入院、退院そして再入院から永眠までを綴ったドキュメントが軸です。
が、その端々に高倉さんの人柄が巧みに表現されています。
そもそも大学卒業後、たまたま受けた芸能マネージャーの面接に隣り合わせた東映専務の抜擢でいきなり映画の主役に!
芸歴も志望動機もなかった高倉さんは、いきなり猛スケジュールの撮影現場に放り込まれます。
当時の人気映画といえば、今日のネット動画の如く。映画館の扉が溢れる観客で閉まりきらない、という盛況ぶりが日常でした。
日活の人気俳優、石原裕次郎を向こうに回し東映の人気路線を突っ走ったのが高倉さん。社運を左右するトップスターに上り詰めるまでにさほど時間を要しませんでした。
専属だった東映をやめ独立してからは八甲田山、幸せの黄色いハンカチほか人気作品に続々主演します。
一連の人気作品の中でも印象深いのは青函トンネル掘削をドラマ化した「海峡」でした。
仕事の鬼、寡黙で厳しい態度で仕事に取り組み時には家庭をも顧みず職務に打ち込む不器用な男・・・・・
それはこの本に描かれている高倉健・像そのままです。
いきなり人気スター俳優の立場に立たされた高倉さんは何より自身の健康と容貌に関しては人一倍の努力を惜しみません。そして撮影のスケジュールを最重要しして自らのスキャンダル報道をも律します。
それはファッションや小物のチョイスに至るまで貫かれたばかりか、職場での人間関係・上下関係にも気を遣う折り目正しい紳士でした。
礼を尽くすという点ではその筆まめさも見逃せません。夭逝した元妻の江利チエミさんの墓参を欠かせなかったことも。映画と違うところは案外饒舌に何時間でも語り続けるところだとか?・・・・・
最期まで、オファーのあった次回作のためにと全快を志し、とにかく全力で俳優人生を駆け抜けた高倉さん
晩年の主演作、ぽっぽやのラストが自身の人生を重ね合わせたように思い出されます。
映画のロケ地、幾寅駅のあるJR北海道・根室本線富良野・新得間も近い将来廃止されることが予定され、映画のように最後の日を迎えます。
ひと足さきに旅立っていった高倉さん、駅長姿も頑固な振る舞いもお人柄をとてもよく反映した作品だった気がします。