2022年07月16日
留萌本線に何が・・・・・
以前から噂には上っていましたが北海道の日本海側と内陸を結ぶ留萌線の一部が来春廃止されることになったようです。
数年前には終着駅の増毛~留萌駅までが廃止となっており、今や鉄筋の立派な留萌駅舎も終着駅に・・・・・それが駅もろとも廃止される運命にあるようです。
札幌から旭川に向かう途中、深川の駅から分岐して日本海へ向かってまっしぐらに向かう留萌本線は途中、深名線や札沼線との接続駅があったり、留萌駅は羽幌線への乗り継ぎ駅だったりと、それ自体が一台ネットワークを築いていたものです。
ニシン豊漁に沸いた沿岸の街も、ニシン景気からは遠ざかり、地盤沈下が叫ばれもしましたが、留萌線の途中駅=恵比島駅がNHK朝の連続ドラマ『すずらん』の舞台「明日萌駅」に設定されたことから、SL列車が走る人気路線ともなりました。
・・・・が、それもかれこれ20年以上も昔の話。
深川―石狩沼田間は今回存続の方向ですが3年後には再検討の上廃止の道も残っています。
そんな、留萌線を舞台にした小説「留萌本線最後の事件」(山本功次)、は文字通り留萌本線を舞台とした列車ハイジャック事件を描いた作品です。
物語は深川駅を朝早くに出発した一両編成のディーゼルカー、キハ54系の乗客からスタートします。大半は廃線を惜しむ鉄道マニアたち、でも中にはちょっと毛色の違う乗客も混ざっていました。ある男はサングラスをかけ大きなショルダーバッグを床に置いて・・・・・ 事件は乗客を人質にとり、法外な身代金だけでなく、意外な要求を突きつけます。犯人の真意、目的は何なのか?乗客はどうやって救出できる? 単に乗っ取り事件の顛末を追っただけではありません。事件のあと、突きつけられた要求がどのように受け入れられるのか?そして、意外な人物がやり玉に挙げられて・・・・・ 鉄道マニアならウンウン唸るカラクリがちりばめられており、内情に詳しい者の犯行...と察しが付くかもしれませんが、物語は留萌線の廃止を巡るある公共事業にも深くメスを入れ、色々と社会問題にも切り込んでいきます。 人質乗客が投稿したSNSが波紋をひろげ、ネット社会の在り方にも一石を投じており、これから起こるかもしれない新種の誘拐事件の解決を難しくするかもしれないヒントが隠されています。 それはそうと、ここまで巧妙な手口と計画、ひょっとして作者がプランニングしたら完全犯罪も実現可能なのでは?と思ってしまうほど見事なやり口には唖然としてしまいます。 そして北海道に土地勘のある人、現地を旅した人なら思い出や郷愁に浸ることもできる・・・・・多角的に楽しめた作品です。 ...