2022年02月08日

視聴率というmediaのものさし

民放テレビ局が勃興し始めると、そのテレビがどのくらい視聴されていたかを調べる会社が現れます。
テレビのある世帯のうち、その番組が何%のテレビ受像機で視聴されていたか?一台のテレビを何人で見ようと数字は変わりません。真剣に見ていたか?ながら視聴だったかも問いません。記録するのはスイッチのオンオフだけ。
この数字が番組のCM枠をスポンサーに販売する際の大きな評価指標になります。

アナログ時代の昔は視聴率を調べる機械というものが存在していて、テレビの下にある大きな箱の中にはゆっくりと動く幅の広い紙テープと地震計のように動く針がセットされていました。
チャンネルをひねると、針が動いて紙の上にその推移を記録していきます。スイッチを切れば針は浮いて記録紙は白いまま。

何十日かごとに調査員がやってきてこの紙テープを持ち帰り、新しい紙をセットする・・・・ずいぶん昔の視聴率調査はこんな仕掛けのものでした。だから祖父母の家にあるチャンネルは12チャンネルから1チャンネルへはぐるーっと反対方向にたくさん回す必要があったものです。

今ではリアルタイムに前日の視聴率がカウントされ、2分ごとの視聴率の変化がデータとして公表されます。アナタがもしも朝のワイドショーのプロヂューサーならどの内容で数字が上がったか下がったか、ライバル局の内容とどっちが勝っていたかなど、内容と数字がダイレクトに判り、反省会の材料には事欠きません。

ビデオリサーチとニールセンという専門の調査会社が集計しているもので、サンプル世帯の違いから細かい違いが生まれることも多々あります。
視聴率が20%を超えると多くの人の目に触れたという実感があり、うっかりフジテレビのゴールデンタイムの番組に顔を出してしまったら、幾人もの知り合いからテレビで見たよ!と声を掛けられ、20%の威力を思い知ることになったりします。

他方で朝のワイドショーが10%もの視聴率を取ろうものなら、それはもうお祭り騒ぎ!某局の担当部署ではコロッケパーティーなるミニ祝勝会が催されたものでした。
朝の通勤通学時間帯にテレビを見られる人口はごく限られたもの。その中で3~4局が似たり寄ったりの内容で数字を競いあうのですから、決して大きな数字は望めません。視聴する層もほぼ固定されていて出演者も世間ではそれほど顔の知れた存在ではなかったかもしれないのは、この小さな10%に満たない数字のせいです。

民放制作の連続ドラマの視聴率が56.3%を記録するといった時代もありました。もちろん衛星放送もネット配信もない時代ですが・・・・・
国民的な大晦日の歌番組も70%を超えるのが当たり前だったのは1980年代まで。世紀末には50%を切るのも珍しくなくなり、その頃には衛星放送もスタートし、パソコンにかじりついていたり、クルマで外出中の国民も増えたため、番組内容が下がったとは一概に言いにくいのも事実です。

これがネット環境の出揃う時代になると、実数で細かい正確な数字がカウントできるようになるばかりでなく、クッキーなどを駆使して、ターゲットのユーザーがどんな趣向で何に興味を持ちそうか?具体的には何を買ってくれそうか?手に取るようにわかるのです。
無料で楽しめるSNSも多くはこうした利用者の個々情報を広告主に提供し、収益源としています。ネット広告の強みは狙ったターゲットに無駄なく広告を表示できる点にあって、同じページを閲覧していてもユーザーごとに異なる広告が流れているかもしれないわけです。

いっぽう、一度に大多数のユーザーに万遍なく広告を見せたいのなら・・・・ゴールデンタイムのスポット広告が有効な手段です。ビールやスナック菓子、インスタント食品はユーザーを選ばず、広く普及させたいため、こうしたメディアが最適な媒体と言えるでしょう。とにかく広く浅く、どんな嗜好の人がどの位真剣に見ているか?視聴率の数字は教えてくれません。

電波に代わりストリーミングで放送を送れば何人のもとに届いたか?正確な数字が分かります。視聴率のサンプル数は意外にも少なく、統計的な誤差は生じてしまうので、これからは視聴の質がますます求められる時代になっていくのでしょうか・・・・・

| 21:45 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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