2021年08月07日
キネマ人のカミさん
今週は久々に見てみたい新作映画公開のオンパレード!
コロナウィルスが存在しなかったら志村けん主演の「キネマの神様」もとっくに完成、公開を終えていたかもしれません。その大役を盟友・沢田研二が引き受けて公開にこぎつけました。
やはり気になってしまうのはジュリーの代演ぶり,どうしても頭の中の志村けんの演技と比べてしまいます。その口調やちょっとコミカルな仕草に志村さん風を意識したかのようなところが見え隠れするのも正直なところ。でもラストの毅然とした態度を見せるところなどは沢田研二らしく締まった演技を見せてくれて、さすがは幾多の映画に主演したスターならではの貫禄を見せてくれます。
前半のダメ親父ぶりよりもこちらの方がはまり役と言ったところでしょうか?実は原作の原田マハの父親がモデルだとか!原作者も驚くその表現力はさすがです。岸部一徳といい元タイガースの両雄は映画界の中でも神様ではないでしょうか?
劇中にはさりげなく小津安二郎や原節子の面影も見え隠れしますが、山田洋二監督とも縁の深い両者。作品の舞台は松竹大船撮影所,そうですあの寅さんを始め幾多の映画が生まれた聖地です。今はもうありませんが、実はここは昔アルバイトでエキストラ撮影に通った懐かしい場所。出入りも比較的自由で休憩時間の由美かおるさんと一緒のストーブにあたって暖をとったり、撮影スケジュールが押し込んで一日中二階建ての旧い木造の事務所内で待ちぼうけを食らったり!
晩年の大船撮影所ではテレビ・ドラマの撮影も行われていて、映画と比べるとVTRテープを使う撮影手順の大きな違いに驚いたものでした。そのVTRがニュース現場でも撮影の主役となり、TV局に入社して目撃したニュース・フィルムの編集作業や現像室は、後輩たちの目に触れる事はありませんでした。
監督の山田洋次さんだってもちろんこの時代の大波を受けただけではなく、今回のコロナ禍という逆境をさえも脚本に追加するしたたかさを見せてくれます。コダックのフィルムで撮影された今回の作品ですが現存しない大船撮影所の正門や中庭の雰囲気を上手く再現しています。..
それはそうとモノクローム映画の美人女優を演じる北川景子の目元のアップが一瞬,吉永小百合のそれに見えてしまう瞬間があったのには驚きました!或いはメイクスタッフの狙いだったかもしれません。
主演の宮本信子,寺島しのぶも家族ぐるみで映画製作に関わるキネマのカミさん達,もちろんお二人とも数々の名作を彩ってきた日本映画の神様であることは言うまでもありません。