2021年07月28日
虚構船団
鬼才筒井康隆の1984年のSF長編大作が虚構船団
もちろん架空の宇宙船団がクォールという惑星の住人を殲滅するべく攻撃に向かうのですが...
船団の乗組員は皆文房具,コンパスや分度器,三角定規にチョークや文鎮。それぞれが偏屈な特性を持ちみんな気が狂っていたところだけは共通。
これから向かおうとしている惑星はその昔流刑となった各種のイタチが住み着き人口24億の世界を築き上げている。ローマ帝国によく似た国家の首領が王位継承を巡って血なまぐさい争いを繰り返したり、ルネッサンス期に様々な芸術が生まれたり、近代以降には東の大陸のオコディ大統領が宇宙開発に傾倒し暗殺事件に直面したかと思えば東端の島国ではカクエ首相が憲法に反して核武装を提唱し...
実は荒唐無稽なSFの仮面の下には壮大な世界史をパロった姿が見え隠れします。誰が何の比喩なのかは直ぐ分かるので世界史が超苦手だった私でも楽しく読み進めることができます。
物語のクライマックスは文具対イタチの最終戦争
生き残るのはどちらか?作者筒井康隆の私生活さえも暴露される終章は筒井ファンには見逃せない一冊です。