2021年04月18日
ただいま横断中
9日に大阪湾を出発した39feetクラスのヨットは現在、銚子沖の太平洋上を東に向けて帆走中。大阪湾を出港したあと紀伊半島を回り込むようにして浜松沖、大島のすぐ南を経て房総半島の沖合いから一路東に針路を向けたのが先週後半。乗り込んでいるのは元読売テレビアナウンサーで、関西を中心に活躍するタレントの辛坊次郎さん。ヨット歴は学生時代以来で専門雑誌にも連載を持つ。その彼が太平洋横断を決意異したのは8年も前。愛艇は太平洋横断には充分すぎる、2人が住み込める豪華なヨット。
8年前の挑戦の詳細は他の媒体に譲るとして、今回はロスの南、サンディエゴを目指しての航海。届出には6月11着予定と(一応)表示されているもの。1963年の堀江謙一青年だったら、今頃音信不通で家族が捜索願を出す意外になす術はなかったでしょう。でも今の船舶には衛星電話の装着が義務付けられるばかりか、専用の端末がGPS位置情報を発信して、それを衛星が受取り5分ごとに最新の北緯、東経、針路などをはじき出し、地図上にプロットしてくれるというからありがたいものです。おまけに近くの会場をどんな船がどちらに向いて航行しているのか、あるいは操業中の漁船なのかもアイコンを見れば一目瞭然。パソコンや端末の画面を見ながら5分前までの航跡を辿るのは勿論、最新の予報マップで風の強さ、風向、波高、気温から天候まで何日も先の予測までわかってしまう・・・・・・・堀江さんの時代にはなかったハイテクぞろいです。
とはいってもこれは全てweb画面上での話し。沿岸から遠く離れてWi-Fiも5Gも届かない海上では、手元のレーダーとラジオのアナログ電波くらいしか情報入手の手段がありません。実際、辛坊さんも、こうしたハイテクには頼らず、堀江さんさながらの航海術で進んでいるようです。
大島沖で撮影された画像でわかる様に、強風下での航行には中々メインセールの出番がなく、赤いカバーに覆われたまま。舟の推進力となるのはもっぱら前半分に張られたジブセールという小さめの三角帆ですが、それも写真で見る限りストームジブという強風用の小型のもの。こうなるとなかなか風上に向けての切り上がり性能が得られず、向かい風に文字通り右往左往してしまいます。衛星電話でご本人が話していたとおり、日本沿岸がひとつの鬼門だったようで、熊野灘では激しい揺れに遭遇。一時は浜松寄港も考えたほどだとか。交代要員のいない単独航海では見張りと睡眠時間の棲み分けも大切。大型船の行きかう沿岸では敢えて南よりにコースを変えたり、船酔いと戦いながらの日々のようです。
最新の情報によれば、日曜日に関東でも吹きまくった強い南風に乗って、この日は大きく距離を稼ぐことができ、福島県いわき沖の東経144度付近まで10ノットという、まあまあの快速で航行中です。真っ直ぐ北を向けば釧路の方向。(4/19昼の時点では東経146度を越えて南東方向に航行中)足元には黒潮、上空には偏西風が吹いているものの風向きはもっぱら近隣の高気圧と低気圧次第。ヨットの上からではせいぜい30kmほど先の海上までしか見えませんが、サンディエゴ行きの貨物船は多くが北東を目指して航行しています。大圏コースといって、メルカトル図法の地図上では半円になってしまう、カリフォルニア沖までの最短コースがこれです。
(写真はイメージ)
ツイッターを探してみても、刻々変わる位置情報を元に多くのウォッチャーたちの関心を集めている様子。
順調なら5月の中ごろにも日付け変更線を越えてもおかしくないプランですが、フィリピン北方には台風2号が北上中、航行海域はこのところ波の高さが10m~5mという厳しい環境。老人と海のワンシーンみたいなのんびりした凪の場面はこの先、訪れるのでしょうか?食料は100日分を越え充分にあるとはいってもカロリーメイトの消費が著しいとか。ここしばらくは波と風との格闘の日々が続きそうです。
どうぞ、お気をつけて・・・・・