2020年07月23日

Pajeroの終焉

三菱自動車が海外向けに(まだ)継続していたパジェロの生産を終了すると発表がありました。へえ~まだ造ってたの?と思う人がいるかもしれませんが、これは歴史的にみると大きなマイルストーンでもあります。

友人にもオーナーが少なからずいたパジェロは一時期三菱随一の売れ筋モデルだったこともあります。ライバルメーカーもランクルに敢えてPの文字を使ったサブネームを加えたほど・・・・
そのパジェロが産声をあげたのはまだまだ日本人がアウトドアブームの到来を予感できなかった70年代末のことでした。

Dscf42204×4という言葉が認知されて間もないこの頃、四輪駆動車と言えば営林署やスキー場のロッジが送迎用に使うクルマでしかなかったものです。
80年代を迎えるとAUDIクワトロがオンロード用途を前面に押し出し、トヨタがハイラックスというピックアップトラックを四駆化して、個人ユーザー向けに売り出したのが発火点となりました。いすゞはファスターロデオ、三菱フォルテも4×4化、ルーツはアメリカでトラックを四駆化するキットが大流行だったことが思い出されます。

モーターショーでの参考出品を経て、それまで三菱が作っていたアメリカ産ジープとは全く毛色の違ったRV(レクリエーショナルヴィークル)として、市場に参入しました。一番手という訳ではなく、すでに市場には日産サファリやトヨタのあまりに有名なランクル、そして直接のライバル、いすゞのロデオビッグホーンなどがありました。ジープのライセンス生産にあたり、簡単には四駆を転用できなかった三菱でしたが、10年後には三菱の一番の稼ぎ頭になっていたのだからビックリです。

なぜパジェロが歴史的なモデルなのかというと、ジープという実用車がありながらも個人ユーザー向けに新規で開発された四輪駆動車だった、というのが在来の四駆と大きく違っていた点です。
トラックを土台にした強固な車体、ゆえに高い目線から見下ろすような運転姿勢。ジープ並みの大径タイヤと圧倒的な悪路走破性、これらがファッショナブルな要素としてトランスファーなんか一度も使わないような都市部のユーザーにも大流行したのです。
そして、もう一つの援軍はアメリカの規制でした。四駆のトラックが大流行しアメリカ製ピックアップの販売をスポイルするのはまかりならん!ということで小型トラックには25%の保護関税がかけられるようになったのです。日本車ピンチ!!

でも、その小型トラック・ハイラックスにFRPのルーフをかぶせて、荷台にリアシートを増設したハイラックス・サーフという新型車を「乗用車」カテゴリーとして輸出したのです。アッパレ!
これがまた北米で大流行!!SUV(スポーツユーティリティ―ヴイークル)という新ジャンルのクルマとしてもてはやされ、いまやアメリカのデファクトにさえなりつつあります。
ベントレーやポルシェ、マセラティやシトロエンまでもがSUVで外貨を稼ぐ世の中になったのは、ほかならぬパジェロが生み出したトレンド、と言えなくもありません。

そんなパジェロがなぜ消える?最初はヘビーDヒューティーともてはやされた,強固なフレーム付きのトラックシャーシも似非SUVが得意とするフレームレスのボディに人気をさらわれ、後塵を拝する側に立たされてしまいいます。国内市場では軽自動車版のパジェロミニが大ヒットしましたが、これもより安価なRVテイストのライバルたちに圧倒されてゆきます。
時流に併せてパジェロも方針変換を進めるべきだったのか?しかし、パリダカでの活躍や長年の伝統はそう簡単には打ち消すわけにはいきません。販売が下火になってからもうずいぶんと時間が経ちます。歴史的に使命を終えた、という車種ではないので生産終了は残念なニュースですが、せめて市場に残っているパジェロにはこれからも頑張って走り続けてもらいたいものです。

| 23:34 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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