2019年07月04日
新作小説は
伊坂幸太郎、一年振りとなる新作小説のフーガはユーガ、一卵性双生児の不思議な物語です。舞台はゴールデンスランバー同様仙台市、謎めいた盗撮映像の説明を求めてやってきた東京のテレビ制作ディレクターに向かって、ファミリーレストランで不思議な双子の生い立ちから数奇なドラマを語り始めるところから物語は始まります。
刊行された前後から児童をめぐる虐待問題や相変わらず減らないイジメの問題など、ストーリーに絡んで登場するエピソードは時代を反映した、と言えなくもない印象ですが、20年も前の猟奇殺人事件を起こした元少年が仙台市内で更生後の生活を送っているというウワサも、あるいはこの物語のモチーフだったかもしれません。
中には目を背けたくなるような残虐な暴行シーン、変態性欲に満ちた場面も登場するので、途中で読み進めるのを止めたという女性読者もいるくらいです。が、最後のシーンまで展開の読めない筋書きはミステリーとも違った独特の手法で、推理小説とは一味違った展開の意外性で楽しませてくれることでしょう。
トリックを使えば映像化も難しくはない内容ですが、ミステリーかというよりホラータッチかのどっちつかずの内容は、映画化しそうな予感はありません。伊坂作品が好きでたまらないというファンならリストに加えておいても無駄ではない、と言ったところでしょうか