2017年09月08日
やったね・BABY
1曲目,The Jon Spencer Blues Explosionの -♫ Bellbottomsのビートに合わせて銀行前に急停車するのはちょっと古い年式の真っ赤なスバルインプレッサWRX。四輪駆動のマニュアル車。運転席にはBABYと呼ばれる雇われドライバー、男たちの合図でバックスピンターンを決めアトランタの街を全力で走り出す・・・・
パトカーの追撃も赤信号も巧みなサイドブレーキ・ターンでかわし、対向車線に偶然見つけた二台の赤いセダン(サターンLS,VWパサート)のあいだに割り込み、トリックを使ってパトロール・ヘリから逃避。無傷のままタワーパーキングに滑り込み、難なく車両を取り替えたところで、ようやく映画のオープニング・タイトル!!
鬼才エドガー・ライト監督が放つ音と映像のマジック。babydriver『ベイビー・ドライバー』は人呼んでカー・アクションの「ラ・ラ・ランド」と呼ばれる作品です。コーヒーをテイクアウトして普通に街を歩くシーンも、銃撃戦で撃ちまくるシーンも、全てのタイミングが曲のリズムとシンクロしていて全編を通して選び抜かれた名曲の数々とカットごとの動きが完全にシンクロしている・・・ミュージカル映画と同じくらい手間のかかる撮影です。
Dave Brubeck - Unsquare Dance のリズムに合わせて「作戦」会議が続きます。ライブ会場なら思わず手拍子を叩いてしまいそうなテンポの良さはローリングストーンズ誌ほかでも絶賛されています。
脚本の段階から音楽と撮影プランをあらかじめ決めておき、撮影時には脚本通りの音楽を流しながらカメラを回したという労作。カーチェイスもすべて実写です。
カーチェイスだけではなく街を疾走する逃走シーンも圧巻、でもやはりクライマックスには赤いダッジ・チャレンジャーとアイザアックヘイズのShaftのテーマ曲♫ これ以上ワクワクさせられるコーディネートはそうそうありません。
でも、凄腕のカーアクションムービーと思って観に行くと騙されます。
主役のBABYは恋愛の初心者。愛する彼女を守るために敢えて、突き放した態度をとってしまいます。そして追い詰められた二人を待つのはゴッドファーザーばりの皆殺しか、幸せの黄色いハンカチか?はたまたボニーとクライドの蜂の巣か・・・・結末は最後のシーンまで予測がつきませんでした。もっと予想外だったのはちゃんとラブストーリーに仕上がっていたこと。
これならクルマは門外漢の女性にも猛プッシュできます。
映画のエンドロール、そうか!この曲があったか!!と思わず「ガッテン」してしまいました。「あすに架ける橋」のなかのこの曲を聴いたのは実に四十数年ぶり、でもちゃんと覚えていましたよ、・・・・そうだよな、そうこなくっちゃ・・・・古くからの洋楽ファン(とりわけ柴門ふみ先生)には見逃して欲しくない作品です