2017年07月26日
lifeteck.1(自動運転の行先)
メーカー各社が取り組む自動運転、トヨタも2020年代を目標に市販化・実用化を目指すと宣言しました。
街中でも搭載車がじわじわ増え始めた昨今、国産車でも複数のブランドから自動運転機能を選べるようになってきました・・・・・・といっても、今の自動運転はまだまだ、初歩的段階。ハンドル操作を自動で行ってくれる点がこれまでと大きく違う進化です。
車の運転はある意味自動化の歴史でもありました。アクセルを踏むとエンジン回転が上がって・・・・・百年ほど前は違いました。エンジン回転が上がると点火時期※を調整し直さなければならず、そのためにハンドルにはアクセルと点火時期、二つのレバーが備わっていました。今では点火時期はエンジン任せ、吸気管の負圧に応じて自動的に早めてくれます。が、誰もそのことを意識はしていないでしょう。
マニュアルのトランスミッションもまもなく忘れ去られようとしています。今、カタログにマニュアルミッションの車が記載されている例はごくわずか。日本での2ドアセダン同様、絶滅が危惧されています。40年くらい前だったら、まだノン・シンクロのギアボックス※2を器用にダブルクラッチを踏んでスムーズに走らせる路線バスが当たり前のように走っていました。
アクセルを踏まなくとも一定速度で巡航してくれるクルーズコントロールは意外に古くから、40年ほど前にはチラホラ見かけるようになりました。これも吸気管の負圧を使ってアクセルペダルを奥から引っ張る原始的なもの。速度の維持だってアナログ制御です。これは重宝しました。が、最近は交通量の増加で前車のとの車間距離を維持するのが難しくなっています。レーダーやカメラを使ったデジタル制御が最近では主流。自動ブレーキもこれらの技術の集積です。
ハンドル操作は長いあいだ、未踏の領域でした。が、最新のスカイラインではモーターが舵を切ります。ハンドルはモーターに指令を送るだけ。緊急時にはクラッチが直結して直接シャフトでハンドルとタイアが連携します。
カメラで車線を読み取り、警告を出すまでは実用化されましたが、ドライバーに替わってハンドルを回す、となるとさすがのメルセデスでも慎重でした。直接ハンドルには介入せず、後輪の片側だけにブレーキをかけて進行方向を変えるという、消極策から始めています。だから昨年、国産車でもステアリング操作に介入したことは長いクルマの歴史上、画期的な出来事でした。これからは高速道路の同一車線、という条件以外にもどんどん応用されてゆくようになるでしょう。
進化の先には無人運転という高いハードルが待ち構えていますが、実際のところ法律の整備がいつも、後追いなのでこちらの解決が大きな壁となりそうです。
機械が運転し、ヒューマンエラーをなくせたら、劇的な交通事故の減少と、保険料率の大幅ダウンが期待できます。高齢者の逆走、踏み間違い事故にも対応策ができているでしょう。
過労運転による死亡事故も減るかもしれません。でも、集積回路に記録されたプログラムだって絶対にエラーを出さないでしょうか?何度も強制終了させている我が家のパソコンを見る限り全幅の信頼は寄せられません。速度を維持してくれるクルーズコントロールだって万能ではありません。
数年前日本メーカーのクルマが高速で減速できなくなり、事態を告げる電話の後家族が全員死亡した痛ましい事故が起きました。原因はまだ未解明です。NASAも加わって大規模な検証が行われた結果、プログラムには欠陥なしという結論しか出せませんでした。ブレーキを踏んでも車速が落ちない。そんなクルマの末路は想像に難くありません。
電子回路がいつまでも正常に動いてくれる、それが本当なら問題ありませんがそうならなかったらどうするか?ニコンのプロ用カメラF6が最後までクランク棒を残し続けたのは、電気が来なくても最低限、撮影済みのフィルムだけは手動で回収出来るように、という配慮からでした。全面的に電気を信用していたキャノンとの最大の違い(魅力)がこれだったのは言うまでもありません。
※点火時期
ガソリンエンジンは回転が早まると早目に点火プラグに着火させる必要があり、古いクルマのハンドルにはアクセルと点火時期の二本のレバーがあった。加速に応じて左手で点火時期レバーを上げて行くのが当時の運転スタイル
※2
フルシンクロメッシュ、と書かれていないマニュアルミッションは変速のたびに二回クラッチを踏み込む必要がありました。
例えば1速で加速後、クラッチを踏んでギアをニュートラルにする
ここでクラッチを一度つないで再度踏み込む
(この時一次シャフトがエンジン回転と同調し二速ギアの回転数に近くなって、ギアがエンゲージしやすくなる)
ギヤが鳴らないよう祈りながらシフトレバーを二速に送り込んでクラッチを繋ぐ
これを停車、加速のたびに当たり前のように繰り返していたのが当時の大型ドライバー達でした。