2017年06月24日
初メガホン
ドラマ「相棒」シリーズはもとより、熱中時代、傷だらけの天使の時代から常にトップの人気を保ち続ける人気俳優;水谷 豊が初めて監督に挑戦した意欲作は、本格的なタップダンス映画というから異色ずくめです。
ショービジネスの世界の<光と影>を描いた野心作・・・・・
ということでさっそく観てきました。いつもの東宝系ではなくトラック野郎シリーズでもお馴染みの東映系。運河沿いにある旧い倉庫に住み着いた水谷豊演じる初老の男・・・・・昼間でも薄暗い部屋にはウィスキーの空き瓶とアンティークなソファーや砂時計、レコードプレーヤーが針を落としたまま回り続けている・・・・・なんとなく傷だらけの天使を思わせる舞台設定です。彼が赴くのはとある落ちぶれたミュージック・ホールのオーディション会場。実際にこの映画に出演する若いダンサーたは今回オーディションで500人から選ばれた主要キャスト。その真剣なタップ・シーンがふんだんに織り込まれます。劇中後半までは音楽もほとんど使わず、タップのリズムだけがまるでロックのビートのように映画を彩ります。
選び抜かれた5人のキャストも個性豊かで、決して芝居がうまい訳ではないものの熱演ぶりに好感が持てます。岸部一徳、前田美波里といったベテランが脇を固め、北乃きいが華を添えてくれます。
そして圧巻はたった一度のステージを彩るキャストたちの熱演。このステージ部分のためだけにどれだけリハーサルと撮影に時間や手間をかけたかを思うと、そうそう類似の作品にはお目にかかれないであろうことが想像できます。ミュージカル映画という構成ではありませんが、それに近い労力が求められます。水谷監督が満を侍してメガホンを取ったのもわかるような気がします。このシーンだけノー編集でじっくり見てみたい、と思わせるほどの贅沢な作りです。
(東映系、6/15より公開中)