2016年12月16日
撮影隊がやってきた 0 0 0
名だたる観光名所を舞台に飛び切りの美女と束の間のロマンス・スリルを味わう定番映画;日本だったらフーテンの寅さん、そのワールドワイド版なら「007」です。「You Only Live Twice」は今から50年も前に日本で撮影が行われた異色の007作品。この作品でアストンマーチンDB-5に代わってボンド・カーの大役(厳密には若林映子カ―で、ボンドは助手席に乗車のみ)を射止めたのが、当時開発の最終段階にあったトヨタ2000GT=特注スパイダーでした。
日本で行われたロケの大部分は今の南さつま市(鹿児島県)を中心に行われました。秘密結社スペクターが極秘に建設した宇宙船捕獲ロケット発射基地 (小さな無人島、「沖秋目島」の設定・・・火口の撮影場所は霧島連山の新燃岳)を捜査するため、日本人漁師に変装したイギリス諜報部員ジェームス。現地の若い海女(浜美枝)と偽装結婚して潜入捜査を続けます。その舞台となったのが、ひなびた小さな漁村、秋目(あきめ・坊津町;当時)でした。ここを舞台にスペクターの秘密基地や南シナ海の美しい海がふんだんにフィルムに収められています。枕崎市街からさらにドライブすること数十km、今よりアクセスが不便だったと思われる半世紀も前に専属シェフも含む、100人もの撮影隊が二カ月間ここに寝起きして、重要なシーンの数々を撮影しました。
撮影に参加したエキストラも地元や博多の大勢の女性たち、全世界で公開される娯楽超大作映画が(鹿児島市からも遠く離れた)こんなに静かな場所で行われていたとは驚きです。
今、当時の興奮を連想させるものと言えば美しい景色とこの記念碑だけ。
最近の作品では長崎、軍艦島で撮影された「スカイフォール」のワンシーンが話題になりましたが、設定はあくまでもマカオ沖の海外。国内のロケ地としてはこちらの方がマニアの位置付けもはるかに高いようで、地元の人々は撮影当時の盛況を懐かしく思い出しているようです。秋目湾に面した静かな景色はほぼあの頃のまま。路傍に割とひっそりと建つこんな記念碑に気づかず通り過ぎる人も少なくないようです。