2016年11月12日
むかしのくらし
広島県には尾道をはじめ映画・ドラマの舞台となった魅力的な小都市がいくつもあります。最近ではマッサンの福山市、ポニョの鞆の浦「とものうら」・・・そして今日から公開の注目の長編アニメ「この世界の片隅に」の舞台になるのが元の軍港、呉市です。
この写真を撮影した場所は戦艦大和の10分の1スケールの模型が展示されている大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)。写っているのは戦艦大和が建造された旧呉工廠、造船船渠(ドック)があった場所、でもこの写真からは当時の暮らしぶり、空襲の激しさをうかがわせるものは見つかりません。
映画ではこの呉市を舞台に広島原爆、終戦を挟んだ戦前・戦時中の暮らしぶりが綿密に描かれていて、その幾多のエピソードは昭和ヒトケタ生まれの私の両親から直接肉声で聞かされていたものとも共通します。被爆する前の広島の街並みやそこにいる通行人のプロフィールの綿密な取材も評判ですが、親の話が実際に起きた事実としてのリアリティを担保しています。
戦艦大和に関する資料はこれまで山のように集められ、ディテールまでも正確に再現されていますが、激戦地の英雄でもない、戦禍の大惨劇でもない、戦時中のありふれた暮らしぶり・そして苦境に翻弄される姿を緻密に描いたことで話題を集めている今回の映画です。
企画書から始まり重役会議でゴーサインが出されるメジャー作品とは違い、この映画を作りたい、見てもらいたいという熱意がクラウド・ファンディングという輪になって拡がり、6年を経て公開されたことの意味を改めて嚙みしめたくなるエンドロールも印象的でした。
東京でも109シネマズ(二子玉川ほか)をはじめ、数多くの劇場で公開され、初日の売れ行きも上々のようです。商業作品としての大成功は難しい内容かもしれません。でも、見逃したくないことしの映画の筆頭としてナンバーワンに挙げたい作品です。コトリンゴ(@kotringo)| Twitter がカバーするフォーククルセイダースの名曲も全く古さを感じさせない魅力を醸し出しているのも印象的です。