2016年06月28日
演じる側と演出側
映画「嫌な女」はちょっと異色の作品です。冒頭の数十秒でテンポよく、登場人物の生い立ち、キャラクター、経歴を説明臭くなく辿ります。最初からドンドン惹き込まれるこの編集手腕はなかなかのもの!
その冒頭のシーンはお揃いのワンピースをギザギザに切り刻む従妹の女の子のエピソードで始まります。あれ?この話、いつか見た覚えが・・・・・・この春に衛星放送でドラマ化された黒木瞳、鈴木保奈美主演のドラマも「嫌な女」でした!・・・・・・・・・・同じ桂望実(かつら のぞみ)原作の物語が相次いで公開されたわけです。しかもテレビ版で徹子役を演じた黒木瞳はこの映画のメガホンをとっています。これは映画監督「(黒木)瞳組」のデビュー作でもあるのです。
テレビ版で彼女が演じた「徹子」を映画では吉田羊が演じます。が、そのキャラクターはテレビ版とは対照的。ナイーブで地味ながら芯だけは強い、映画版「徹子」の印象は前後して撮影されたと思われるテレビ版とは明確に違います。黒木監督がどんな演技プランを授けたのか、おそらくは映画撮影の後で臨んだと思われるテレビ版ではどんな徹子役を演じ分けていたのか?二つの作品を見比べてみると興味は尽きません。
テレビ版「夏子」を演じる鈴木保奈美もコケティッシュな微笑が美魔女らしさを倍加させていて超魅力的、赤名リカ(東京ラブストーリー;CX)の保奈美ちゃんも可愛かったけれど今の保奈美さんもまだまだ素敵です。映画版の「夏子」を演じる木村佳乃もまた、これまでと違った妖艶な魅力に溢れています。キャストも脚本・構成も全く違う二本の作品、共通項は原作者(桂望実)・黒木瞳の二人だけ
それにしても演じる側と演出側という対局的な立場を同一の作品でほぼ同時期に経験した日本の女優というのはこれまで、例を見なかったはず。テレビでは6話分のボリュームを映画サイズに巧みにまとめた構成の苦労も伺えますが、編集にも無駄がなく、とても只の新人監督とは思えない仕事ぶり・・・・初舞台とほぼ同時期の1981年にはワンシーンながらも「南十字星」で映画デビューを飾り、「化身」「失楽園」などで数々の映画賞に輝いている(映画女優歴35年!の)彼女の映画愛、人間愛が結実した意欲的な作品です。
松竹系ほかで公開中