2016年05月20日
with GMとともに
永くGM(General Motors Company, 米ゼネラルモーターズ社)のCEOを務めたアルフレッド・スローンの自叙伝的回顧録「 GMとともに 」は経営者のバイブルとしてあまりにも有名な一冊です。日本語にも訳されて、そのビリヤードの球ほどの厚みがあろうかという名著が今、私の手元にあります。
物語のスタートは今から100年ほど前、小さなベアリング会社の話から始まります。T型フォードを追い抜いて何故GMがトップに立てたのか?車というビジネスは何が特殊でどう難しいのか?多くの経営者がバイブルとして崇めるこの本にはGMの歴史だけでなく自動車産業創成期の様々な偉人が登場します。マニアならこれも人の名前だったのか!というおなじみの人物も多数登場します。クルマ好きにも勿論お薦めの一冊です。5000円もしますが・・・・
実はこの一冊、3月までは元雑誌編集者にして経済評論家,岡本氏の書庫に眠っていました。その彼が3月初め急病に倒れ帰らぬ人になってしまったのです。過日催された偲ぶ会には遠く海外からも急遽参加を決めた旧知の友ら171人が参加しました。
会場の一角には彼の蔵書から形見分けにと、選り抜きの数百冊が並んでいました。経済関連を中心に生物学あり、ウェブ検索のメカニズム本...クラッシックCDもあり、オペラのチケットを栞代わりに挟んだ公演パンフレットの数々などは日本ではなかなかお目にかかれぬ稀少品です。小説がひとつもないね、とはある友人の鋭い指摘、弔辞では密かに大宅賞を獲りたがっていたエピソードも紹介されていました。
業界では幅広い人脈と人懐っこい性格の良さが評判の彼でしたが、50を越えたばかりでの夭逝は残念すぎます。形見分けにと、何冊も譲り受けた彼の蔵書には至る所に傍線の書き込みがあり繰り返し熟読されたであろう様子が偲ばれます。スローンが亡くなって丁度半世紀、こうして2人の足跡をたどりながら今夜も活字を追い続けています。
合掌
岡本呻也氏
アルフレッド・スローンに
感謝をこめて