2008年02月18日
防氷液が離陸トラブルの要因に?
新千歳空港での日航機の離陸トラブルについて、
国交省は、離陸直前に散布する防氷液の効果が
失われるのを気にして、管制官の指示を聞き違えた
との見方を強めています。
防氷液、除氷液とも言いますが、ご承知のように
飛行機に雪や氷は大敵です。
飛行機は翼の上と下を流れる空気の速度差によって
揚力を得ています。
飛行機の翼は一部例外はありますが、ほとんどは
上側が湾曲し、下側はほぼ平面となっています。
上側を流れる空気は下側を流れる空気よりも
スピードが速くなるため圧力差が生じ、下側の空気が
圧力の低い上側に向かって翼を持ち上げます。
飛行機のスピードが速くなればなるほど、この圧力差は
大きくなり、飛行機は空中に浮くことになります。
従って、翼の上側は空気が流れやすいようにつるつるに
しておく必要があるのです。
雪や氷が翼の表面に付着すると、この流れが阻害され
揚力が極端に低下して、飛行機は浮き上がれません。
付着した雪や氷はスピードが増せば、吹き飛ばされる
のではと思うかも知れませんが、高速で飛行する機体の
表面は数ミリの厚さで空気が流れずに機体にまとわり
着く性質があります。(これが飛行機にとって大きな
抵抗となります)
このため、翼の上に積もった雪は、出発前に取り除かなければ
なりません。
北国の空港などで、除雪車による作業が行なわれているのを
よくご覧になると思います。
防氷液は一般的に凍結点が-60度という
エチレングリコール液を水と混ぜて高圧で吹き付けます。
この作業には1回当たり時間にして30分から1時間、費用は
50万円程度かかるといわれています。
(除雪車は3800万円のフォード社製です)
この防氷液は、外気温によって違いますが、だいたい30分から
1時間でその効果は無くなってきます。
そのために、いったんこの作業を終了したら短時間に離陸
しないと、また、除雪作業のために駐機場に戻らなくては
なりません。
パイロットや航空会社はこれを大変嫌います。
出発時間が遅れたり、経費がかさむからです。
こうしたことが、離陸を急がせる心理状態をパイロットに
与えているのではないか、というわけです。
しかし、安全運航は何よりも優先されなければなりません。
旅客機を運航する当事者一人一人がこのお約束を
守りぬいた時、空の信頼性は確立するものだと思います。