2024年01月13日
やってみなはれ(読んでみなはれ)
昨年亡くなった伊集院静さんの作品「琥珀の夢」の表紙の隅に鳥井信治郎の文字を見つけました。
現・サントリーの創設者でトリス・ウィスキーの語源にもなった有名な商人、さらに松下幸之助や阪急グループ創始者の小林一三との縁もあるお馴染みの人物です。史実に基づく小説ですが、チラッと読んですぐさまレジへ。
のちにパートナーシップを結ぶニッカの創始者=竹鶴政孝との出会いからのくだりはNHKドラマ「マッサン」でも描かれていて、まずはこのチャプターから読み始めます。
すでに赤玉ポートワインで成功を収めていた鳥井の元へ英国からウィスキーづくりのノウハウと金髪の新妻を得て帰国したばかりの竹鶴政孝が飛び込んできます。ふたりの共通の目的はただ一つ。日本では誰も手を出さなかった本格的な国産スコッチ・ウィスキーの量産、販売です。
ドラマでは鳥井を堤真一が、竹鶴を玉山鉄二が熱演しており読み進めながら二人のイメージがありありと浮かんできます。そして大阪のスタジオで熱演する二人の傍で原稿用紙にペンを走らせる伊集院さんの姿があるかのような・・・・
ドラマの熱演さながらに活き活きと主人公らを描く筆致に知らぬ間にどんどん引き込まれていきます。
自伝やエッセイをベースにした伊集院作品も多い中、史実の綿密なリサーチをもとにドラマチックに構築していく作業はさぞ時間を要したことと想像しますが、大正から昭和にかけて世相も織り交ぜながら、この破天荒で人並み外れた商人の生き様を描いています。
参考までに日本で最初の本格ウィスキー工場(ブランドにもなっている山崎)の起工式から今年でちょうど100年を数えます。