2022年01月24日
貝に続く場所にて
ドイツの北部ニーダーザクセン州にある都市.ゲッティンゲン。大学の並ぶこの学研都市には太陽系をもした惑星の模型が並んでおり,最近になって冥王星が惑星の仲間からはずれた事で話題を呼びましたが・・・・・
芥川賞の候補作にもなった本書の著者は仙台生まれの女性、東北大、大学院に学びゲッティンゲン在住。
舞台は寺田寅彦の作品にも登場するドイツの地方都市のひとつ、ゲッティンゲン。まるで主人公と一緒にこの街を散歩しているかの様に展開します。そこに2011年の津波に呑まれたはずの野宮という男が登場します。大学院では一緒に卒論のテーマを共有した仲、とくにしたしいわけではないものの彼の消息は依然として掴めないまま・・・・・
消息を求めて歩きまわった仙台の街で幾つも目にしたおびただしい数の浮遊しているモノたち、それはかつて誰かが所有していたモノたちであって,今はかつての持ち主たちとは、まったく無関係にそこに存在している・・・・。
ゲッティンゲンの女友達の愛犬が見つけて来る不思議な誰かの元所有物たち、そして町外れに出現するとウワサの冥王星の模型と太陽系の惑星である事を示す撤去されたはずのプレート
作者が描いている世界の中には、この世に存在しないものや過去には存在していたもの、ウワサには上るものの真偽の程は不確かなモノまで区別無く現れては消える。ちょっと不思議な感覚を味わいながら,その独特な美的表現の数々にも酔いしれながら、不思議な惑星間旅行を味わったような読後感が感じられます。
ちょっとストレンジな雰囲気に浸ってみたくなったら、この本のページを開いてみる事をお薦めします。