2020年12月26日
絹屋と直弼の生涯
時は江戸末期の動乱期より遡ること数十年
のちに彦根藩主の跡取りとなる鉄三郎は一人の焼きもの商人と偶然出会う。名を絹屋半兵衛と言い呉服屋の主人で、侍の自分とは身分も境遇も違いすぎる。
しかしながら鉄三郎と同様、半兵衛は陶磁器に強い興味を持ち、自ら立ち上げた窯で瀬戸にも有田にも負けぬ逸品作りを目論んでいる
足りない資本は、協賛出資者を募り、名うての職人をスカウトし、理想の窯作りに奔走する情熱家のあきんど。
とはいうものの幾ら良品は出来ても販路を持たぬ悲しさ。巨額の投資は回収見込みが立たず、藩からの借入金も膨らむばかり。ついには藩から窯の召し上げ命令が!
これと前後して、鉄三郎はのちに彦根藩主・井伊家の世子となり、井伊直弼と名を改める
欧米列強が相次ぎ植民地を手中に収め日本としても砲火を交えざるを得ない状況下、直弼は日米就修好商条約を推し進めようとする。
しかし政権内外を問わず守旧派からは反対の声も絶えない。尊王か攘夷か。今は内乱などにかまけていられる場合ではない。孝明天皇の理解もきっと得られるはず・・・
そんな直弼には桜田門外の変と言う運命の日が待ち受け、刻一刻と迫っている!
経済小説で定評のある幸田真音の本格時代小説、時代の波にもまれて想いを遂げられなかった半生。激しい時代のうねりの中に飲み込まれた2人の数奇な運命と奇跡とも言える繋がりの妙、760ページがあっという間に読みすすめられるテンポの良い筆致も魅力の一冊です。
井伊直弼は大河ドラマの第1作に選ばれた逸材でもあり、度々名優が演じている超有名人。大河・次回作では岸谷五朗が演じることになっています。