2016年11月13日

共和党時代の産物

8年ぶりの米共和党政権下では経済はどんな方向に進むでしょうか?日本時間の9日の為替相場の混乱が物語っています。前日からクリントン優位の報せに105円台までドルが値上がりしました。開票が進んで俄かに局面が変わり始めたのは東京、午前11時を過ぎてから。あっという間に104円台を割り込みついには101円台をつける円高水準!トランプ優勢が伝えられ始めていた頃です。クリントン敗北宣言でもはやこれまでかとおもいきや、翌日のNY株式相場は最高値を更新。あれ暴落のシナリオはどうしたの?円高も結局、年末の海外旅行シーズンを控えているのに106円台をつけるまでに至っています。

とかく経済と選挙は終わってみなければわからないもの。では終わっちゃった共和党時代を自動車産業の面から見てみます。

最も印象的だったのはレーガン政権時代、1980年代です。日本車のブームに反発も沸点に達したようで、メーカーとしても有効な回避策を探っていました。先陣を切ったのはHONDA、アメリカに乗用車現地組み立て工場を建設します。場所は今度の選挙でも激戦区の一つオハイオ州、ここでアメリカの売れ筋、アコードを生産します。マツダ、トヨタも現地化に踏み切りメイドインUSAの日本車がアメリカのフリーウェイを埋めて行きます。
そんなさなか、プラザ合意を境目に円ドルレートは100円台に、もはや日本から安い大衆車をどんなに送り込んでも割高になってしまい勝負になりません。そこでトヨタも日産もHONDAも経営方針を大きく変えます。付加価値の高い高級車マーケットを新規に開拓して数よりも質で勝負するスタンスをとりました。高級車レクサス、超高性能スポーツ、NSXの誕生です。
円高の勢いはとどまることを知らず、とうとうアメリカ工場で作って日本に輸出した方が儲かる車種も出てきました。逆輸入車ブームの到来です。USアコードワゴンはどの国から輸入された車種よりも多く売れました。
パパブッシュが政権を握ると、もっとアメ車を買え!と関係者を引き連れて売り込みに来ます。あまりのプレッシャーに晩餐会のご馳走を戻してしまうくらい気が重かったったようです。

ああそれなのに、肝いりで立ち上げたGM6番目のブランド:サターンもクライスラーネオンもさっぱり売れず、民主党クリントン政権下でいつの間にか忘れられた存在になっていました。

その前のニクソン政権ではどうでしょう?まだビートルズが解散前のアメリカ、マッスルカーと呼ばれる大排気量のスポーティクーペの全盛時代、アメ車の恐竜時代です。映画の主役にもなりました。ヴァニシングポイントのダッチチャレンジャー、ダイアモンドは永遠に、のムスタングはヴァニシングin60や日本の刑事貴族でも愛用されていましたっけ。そんな楽しい時代もウォーターゲート事件とオイルショックがピリオドを打ちました。
ムスタングは小型車ベースのムスタングIIに変身しヒットランキングからサヨナラしました。弱小メーカーAMCのペーサーという貧乏くさい安物グルマが大ヒットし、マニアでなくても日本車を買いにくる客が大幅に増えました。カローラもシビックもこの時代になるとアメリカでもフツーに見かけるようになります...............このことが、やがて訪れる貿易摩擦の火種になります。
あまりに売れて人気のダットサントラック等に危機感を覚えたビッグスリーは、この小型の輸入トラックに25%もの高い関税をかけます。もう、完成車輸出は商売になりません。その頃、こうした小型トラックを四輪駆動に改造するパーツが流行り始めました。見た目もいかにも遊び人風でステータスにすらなり得ました。
バックトゥーザフューチャーで過去に時間旅行して現代に戻ってきたマーティーが自宅のガレージで目にするのは憧れのトヨタ4×4です。

増税分に見合う価格上昇には高い付加価値を与えて対抗です。が、思わぬ秘策も...トラックの荷台にハードトップの屋根と座席をつけて乗用車だと言い張って輸入させるのです。もはやトラックではありません。スポーツユーティリティヴィークルという新種のジャンルです。今に至るSUVのブームは、元はと言えば貿易摩擦の高関税が生んだも同然、レーガン政権の置き土産だったというわけです。

どちらの政権下でも日本車叩きのつもりが新たなマーケット開拓に力を貸してくれたようなものでした。今度の政権下ではどうでしょう?安い韓国車の勢いは続くのか?中国製の電気自動車はブームになるか?予想のつかない局面にまたまた置き土産も期待できそうな予感が

| 18:40 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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