2014年12月03日
まもなく発射
7年もの長いフライトを終えて小惑星を往復して来た,ニッポンの宇宙探査機「はやぶさ(初代)」が帰還、日本中に大ブームを巻き起こしたのが2010年のこと。月よりも遠くの惑星から初めて試料を持ち帰っただけでなく,宇宙での迷子・発見、帰宅の最長不倒記録も併せ持っています。
そんなはやぶさの2世号が種子島の宇宙センターから打ち上げられます、当初予定された30日は雷の可能性があって見送られ,12月3日(水)13時22分04秒の打ち上げが予定されています。
地球を周回する人工衛星とは違って,打ち上げのタイミングは一日の内でもたったの1秒。これを逃すと24時間近く待たねばなりません。なぜならば・・・・・
はやぶさが地球軌道よりも遠くの太陽系軌道を通る小惑星を目指すには地球の近くを通過して加速するスイングバイ航法を使わねばなりません。空中ブランコで相手のブランコに飛び移り、さらにその先の標的に寸分違わず到達するようなタイミングの難しさを含んでいるのです。地球も小惑星も明日までには夫々違う位置まで進み,最適な軌道もその都度再計算しなければなりません。チャンスを逃せばそれだけ遠回り、長距離の飛行を余儀なくされるばかりか、帰還のタイミングも大幅に狂って来ます。はやぶさ1が当初、2007年帰還予定だったのに、3年も遅刻して帰って来たのは地球との位置関係が上手く揃わず,残りの燃料で帰って来るにはほかに手段が無かったからでした。
つまり今回のはやぶさ2でも、打ち上げまでに開発、テスト、完成,納品を済ませなければなりません。さらに、難問はテクニカル面だけではなく政治の話にまで及びます・・・・
そもそも計画が持ち上がったのは、まだはやぶさ1が飛行中の頃。成功かどうかもわからない段階で小変更を加えた改良機を打ち上げるプランでしたが、同じことを二度やることに意義があるのか?一度に何10億もの予算をつぎ込む意味はあるのか?・・・・・2009年に発足した民主党政権の事業仕分けも大きな壁となって立ちはだかりました。そしてリーマンショックに2011年の大震災。予期せぬ財政見込みに何度も予算削減のピンチに遭遇し、満額の予算が得られず、計画白紙撤回の危機に見舞われていました。小さな部品の一つでも発注が遅れると打ち上げ日程に間に合いません。こんな経緯から当初の打ち上げ計画の2010年、2012年のチャンスを逃しています。
世界で一番目にサンプル回収の大きな成果を上げてきた初代はやぶさ、日本のモノづくりが最高峰にあること、それを支える技術者が沢山いることを改めて世界にアピールすることもできました。がしかし、技術を伝承しアメリカや中国の追随を振り切ってさらに高い嶺を目指さなければアドバンテージは保てません。若い技術者やノウハウの蓄積も国家として責任をもってバックアップすべき課題です。
今回はやぶさ2を載せてくれるのは日本を代表するロケットH2-A、90分もオンブされてから遠い宇宙へと旅立ちます。正常に機能すれば、大気圏突入前にカプセルを分離したはやぶさ本体は逆噴射をかけて地球から遠ざかり、燃え尽きることもなく次のミッションに向けて待機します。打上からスイングバイまで1年、そこから小惑星まで二年、滞在、観測が一年半、帰還に1年・・・・2020年地球帰還までの長い道のり、どうか無事に帰ってこられるよう祈らずにはいられません。