2014年11月24日
今年,この二台
いつの日か未来から2014年を振り返った時に,真っ先に思い出されるのは世界で最初の市販量産型のあのクルマに違いありません・・・・・水素燃料電池のTOYOTAミライとBMWの電気自動車”i3”です。どちらもプリウスみたいにバカ売れするような商品ではありませんが、とにかく意欲的な製品で,お金を(ある程度)出せば、誰にでも買えるものを世に送り出した,というのはかなりの勇気ある経営判断だと思います。
BMWのi3はリチウムイオン電池のEV,それって画期的なの?・・・と思われるかも知れませんが,このクルマの挑戦的なところは生産工場からクルマの素材まであらゆる部分がコレまで百年以上の自動車の歴史を一から覆す(かもしれない)であること。
ツートンカラーに彩られた車体はフレームのアルミ以外全てカーボンファイバー。鉄板は使っていません。街の板金修理屋さんも出番が有りません。この車体の製造の為に専用の工場を新設し,使われる電力も自然エネルギーを活用。コレまでの鉄とエンジンを使ったガソリンを燃やすクルマとはタイア以外に同じものが全然無いという、ひとつの自動車会社にとっては大きな冒険です。
発電専門のエンジンを積んだレンジエクステンダーというオプションもユニークな存在で、EVにつきまとう電池切れの不安を100kmだけ解消してくれるのもユニークです。そして500万円台という値段は、この内容を考えると決して割高ではないことに驚かされます。
いっぽうのミライは燃料電池車が既に現実的なクルマとして完成されたことを示す,需要なベンチマーク。1997年のプリウス発売と同様に語り継がれる存在になるでしょう。ホンダはひとあし早くリース形式の燃料電池車を量産していますが,コレは実験車レベル、何よりその価格が違いすぎます。水素供給という未知数のインフラが整うよりも前にこのクルマを世に送り出したことに意味があります。 燃料電池のクルマはTOYOTAが用意した。じゃあ,インフラの整備は誰が率先すべきなのか???電気自動車を充電する急速充電器なら駐車スペースと充電器、それに200Vの電気が来ている場所ならばどこでも簡単に設置できますが、水素ステーションの普及となると、もはやいちメーカーが仕切れるような規模の問題では有りません。水素の供給価格だって、石油業界からの横槍が入らないか、不安を並べたらキリが有りません。充電式EVよりも遥かに困難と思われる燃料電池の世界に敢えてクルマを送り出したTOYOTAの勇気にコレまた拍手を贈らねばなりません。
さて,見逃せない要素はコレだけではありません。その高級車のような乗り心地に注目です。補助金を受けても、各500万円からの出費,静かでパワフルな輸入高級車がいくらでも選べる価格帯です。が、おそらくそのどのライバルに較べても見劣りしない静粛性,はっきり言って無敵の静かさです。一旦これらのクルマのオーナーになったら、もうウルサイ・クルマには戻れないことでしょう。ガソリン車に乗り換えたとしても,求めるレベルは厳しくなっているはず・・・知らず知らずのうちに消費者の目を肥えさせてしまう魅力を持っています。つまり高級車マーケットの開拓に人知れず貢献していると云うこと・・・・コレもクルマ業界にとっては大切なことです
思い切って二種類まとめて買ってしまった!としても、まだポルシェのありふれた911一台分です。昔ながらのリアエンジン、クーペも捨て難いところですが、いま未来を存分に味わってみるのも悪くはないお金の使い方だと思います・・・・・