2012年08月28日
Steel Orchid
=「ハガネ(鋼)で出来た蘭の花」・・・・ ビルマの民主化運動リーダー
アウンサンスーチー女史に付けられたニックネームのひとつですが
実際の彼女はイギリスの学者と結婚し二児を設けたフツーの主婦でした
1988年までは・・・・・
物語は彼女が重篤の母親を見舞いにビルマへ一時帰国するところから始まります。
映画「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」を監督したのは
仏映画の興行成績を塗り替えた「taxi」シリーズのリュック・ベッソン
事実に基づいたドキュメンタリータッチの脚本をテンポある編集で,飽くこと無く魅せるのは
流石の手腕。でも,ウケねらいの小ネタはいっさい無いし,家族愛を横糸に,軍政に抵抗する
女性活動家の生き様を真摯に描いてゆく、今までの商業作品とは全く別人のような作風。
映画の出来映えやスーチー女史の半生は他メディアに譲るとして,クライマックスのひとつに登場するのは(たぶん短波の)小さなラジオ。自宅軟禁下にあって電源も断たれ,家中探して見つけて来たラジオに電池を入れると、BBCラジオが生中継するノーベル平和賞授賞式の模様が。出席出来ない彼女本人に代わって受賞演説する長男のスピーチに耳を傾け,涙しながらノルウェーの受賞会場の演奏に併せてピアノの鍵盤を叩くスー。
ラジオという音声メディアがあったからこそ、家族の愛情を確かめることが出来た瞬間です。
アジアには今だにwebへの自由な書き込みや閲覧を制限出来る国家が存在しますが、満天の星の様に降り注ぐ海外放送の電波までは軍政と云えども止めようがありません。この映画の製作後,軟禁を解かれて彼女が英国への一時渡航を許され、家族と再会を果たしたニュースは,きっと民主化を待ち望むビルマの民のもとにも届いたことでしょう。
※文中、現時点での国名/ミャンマーは映画の主旨に倣ってビルマと表記します>角川シネマ有楽町 The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛(字幕版)
上映中!※8/31(金)まで
そして九月、国連関連の会合出席のため,スーチー党首はアメリカ,オバマ大統領と会談。シンクタンクからは人権擁護に貢献したでしょうということで特別賞を受賞。なんたって、国連は昔彼女が勤めていた職場。再訪問は四十年ぶりなのだとか。
アメリカ側は国賓級のもてなしで、この野党党首を迎えました。異例ずくめともいえる待遇のウラには,民主化と相反する中国の存在も見え隠れしている様です