2011年10月04日
ヘリコプターの尾翼
きのう、神奈川県の清川村で、資材を運搬していた
東邦航空のヘリコプターが墜落し、機長が死亡、
整備士がけがをしました。
テレビ放映された墜落直前の写真では、吊り下げ
られたワイヤーがテールローターに当り、ローター
の先端部分が破損している状況が映し出されて
います。
墜落したヘリコプターはフランス製のアエロスパシアル
AS350エキュレイユで、登山道の整備に使う
丸太や金網などをフックとワイヤーで吊り下げて
運搬した後、ヘリポートに戻る途中でした。
つまり、ワイヤーはフリーな状態で、強風や機体の
飛行姿勢などで大きく揺れていたと考えられます。
AS350のテールローターは機体の最後部に取り付け
られている垂直安定版の少し手前(機体の前方方向)
に設置されており、そのさらに手前には水平安定版が
ありますが、ワイヤーが後方に傾いた場合、垂直に回転
しているテールローターにはダイレクトに当たってしまいます。
テールローターが破損するとヘリコプターはどうなるか、
これまでも何度かお話したことがあると思いますが、
機体はメインローター(胴体の上で水平に回転している
大きなローター)の回転とは反対方向に回転を始めます。
これは反トルクの作用が働く為で、これを防ぐために
テールローターで回転を打ち消す方向に推進力を持たせ
て機体の安定を保っています。
機体の進行方向を変えるにはこのテールローターの
ピッチを変える事で行います。
従って、機体の最後部に取り付けられている飛行機の
尾翼に当たる垂直安定板と水平安定板にはラダーや
エレベーターの動翼は付けられておらず、機体の安定を
補助するだけの役割しかありません。
(ただの板切れでもいいのでヘリコプターの場合は、
尾翼とは呼んでいません)
もっとも、機種によっては水平安定版の迎角が変化する
ものもあります。
テールローターが破損した場合、機体を制御する方法は
ほとんどないと言ってよく、エンジンからの駆動軸とメイン
ローターとを接続するクラッチを切って、メインローターを
空転状態にするオートローテーションも可能ですが、
これはあくまでも高度が十分にあり、広い空き地があって
可能なことで、今回の緊急事態には対応できなかった
可能性があります。
吊り下げたワイヤーがどうして後方に大きく傾いたのか、
先端にフックを取り付けたワイヤーはそれなりの重さが
あったはずで、推測をお許し願えれば機体を前後方向に
増速するか減速するか、あるいは飛行高度が低かった
ということであれば、森林の樹木の先端にワイヤーを
引っ掛けたといったことが考えられます。
何れにしても、ヘリコプターを使った物資の運搬は全国
で頻繁に行われているだけに、きょう行われる運輸安全
委員会の航空事故調査官を同行しての神奈川県警の
現場検証の結果に注目したいと思います。