2011年03月20日
「頑張って下さい!」という言葉
「頑張って下さい!」人を元気づける言葉として
これほど便利な言葉は他にありません。
「頑張れニッポン!」、「頑張れ東北!」・・・・・・・
放送でもよく使います。
でも・・・・・・・・
「頑張る」というのは、困難に耐えて一所懸命に努力して
何かをやりぬく事です。
この言葉の語源には二つの説があって、一つは「眼張る」
見張るという行為から一定の場所から動かないという
意味に転じ、さらに現在の意味になったという説。
もう一つは、「我を張る」から転じたという説です。
どちらも納得の説ですが、頑張ることがいい事ではない
場合もあります。
阪神淡路大震災の取材で現地を訪れたとき、ある人から
こんな話を伺いました。
「田中さん、放送ではキャスターやリポーターの方が
「頑張って下さい!頑張って下さい!」とおっしゃるけど、
我々がぎりぎりの状態でこんなに頑張っているのに、
これ以上、どうやって頑張ればいいのでしょう!」
私はこの言葉に衝撃を受けました。
「そうなんだ!」・・・・・・・放送で何気なく使っている
「頑張って下さい!」という言葉が、被災地の人々の心を
知らぬ間に傷つけているという現実。
この話を、大震災から数年後放送業界の業界誌、月刊「民放」の
コラムに書いたところ、静岡のテレビ局の広報担当者から
手紙をいただきました。
文章を読んで大変感銘を受けたので、社員の防災研修に
役立てたいがいかがでしょうか、との内容でした。
私の拙い文章がお役に立つのならと二つ返事で了解した
のは言うまでもありません。
では、「頑張って下さい!」の代わりに何と言うのか・・・・
阪神淡路大震災で被災したその方は、「どうか御身大切に!」
と教えてくださいました。
「大変でしょうが、どうかお体を大切になさって下さい!」
これでいいのだと思います。
現地のご苦労を思い被災者の無事を思いやる、そんな気持ち
で日々の放送を伝えられたらと思います。
その方は、「瓦礫」という言葉にも抵抗があるとおっしゃって
いました。
長年住み慣れた愛着のある我が家を地震によって破壊され、
使い慣れた食器や懐かしいアルバムの残る粉々に壊れた
我が家を「瓦礫」と、一言でかたづけられたらたまらないと言う
のです。
「瓦礫」というのは、コンクリートや鉄骨の破壊された様子を
いい、木造家屋の多い日本建築にはあまり馴染まない
言葉ではありますが、この言葉に代わる適当な言葉はなかなか
思い当たりません。
「瓦礫の山」というのは、おびただしい数のバラバラに壊れた
家屋がとか、沢山のめちゃめちゃに破壊された家屋といった
ところでしょうか。
16年前、このことを教えてくれた方は、いまどうしていらっしゃる
でしょうか・・・・・・
東北関東大震災の想像を絶する揺れ(震源に近い方はもっと
凄かったでしょうが)を経験して、思いを巡らさざるを得ません。