2010年11月09日
A380緊急着陸す!
今月4日、シンガポールのチャンギ国際空港を
離陸したカンタス航空のエアバスA380が、
インドネシアのバタム島上空で発生したエンジン破損のため
同空港に引き返し緊急着陸するという事故が起きました。
乗客乗員466人にはけがはなかったものの、最新鋭の
超大型旅客機のエンジントラブルとあって、航空関係者に
衝撃を与えています。
3年前から商業運航が始まっているA380は、
現在、各国の航空会社によって34機程が就航
しています。
A380のエンジンは、イギリス・ロールスロイス社製の
トレント900と、アメリカのGEとP&Wの合弁企業
エンジン・アライアンス製のGP7270の2種類から
選択することが出来ます。
今回事故が起きたカンタス航空のA380は、
トレント900を搭載しており、他にもこのエンジンを
採用する航空会社は、ヴァージン・アトランティック航空、
シンガポール航空、タイ国際航空、中国南方航空、
ブリティッシュ・エアウェイズ、マレーシア航空、
ルフトハンザドイツ航空など8社に及んでいます。
今回のエンジントラブルは、飛行中にボンという爆発音
とともに、エンジン部品が落下し、落下した部品の
一部がバタム島の地上で発見されるという極めて
深刻な事態となりました。
事故機の映像を見る限り、燃焼タービンを覆うエンジン
カバーは一部が脱落しており、黒いこげ跡も見られます。
A380は左右の翼に2ずつ合計4つのエンジンを
搭載しています。
今回のトラブルが深刻だったのは、A380は超大型機
のため左端の第1エンジンと右端の第4エンジンとの
間隔が大きく開いています。
(つまり胴体の中心線から外側のエンジンが大きく
離れています)
このため、着陸時に使用するスラストリバーサー=逆噴射
装置が内側の第2エンジンと第3エンジンにしか取り付け
られていません。
外側の第1エンジンと第4エンジンに逆噴射装置を
取り付けた場合、万が一、制動時に一方が故障した際、
グランドループが発生して滑走路を大きく逸脱する恐れが
あるからです。
今回の事故は左側の内側に取り付けられている第2エンジン
で発生しました。
従って、逆噴射装置は第3エンジンしか機能しておらず、
バランスをとるためにこの第3エンジンの逆噴射装置も
使用しなかった可能性も考えられます。
もし、逆噴射装置を作動せずに着陸していたら機体を
停止させるまでに長い滑走距離が必要だったはずです。
広大なチャンギ空港だから出来た緊急着陸と言えるでしょう。
航空関係者が墜落の可能性もあったと指摘する今回の
エンジントラブル、果たしてそれが単なる整備上の問題
なのか、あるいは構造上の問題なのか徹底した原因究明が
求められます。