2010年07月27日
セットリング ウィズ パワーって!?
おととい起きた防災ヘリコプターの墜落事故で、
事故原因の究明を行っている運輸安全委員会の
調査員は、事故が「セットリング ウィズ パワー」
によって起きた可能性を指摘しました。
「セットリング ウィズ パワー」という言葉は、
航空用語の専門書を調べてみても載っておらず、
パイロット仲間の俗語として使われるケースが
多いようです。
正式には、「ボルテックス リング ステート」と
呼ばれているようで、直訳すれば渦巻き輪状態
となります。
数年前に、アメリカで開発中のティルトローター機
であるV-22オスプレイが飛行中に墜落する事故が
おきましたが、この事故の原因がボルテックス・
リング・ステートだったようです。
ヘリコプターなどの回転翼機がホバリング中に
自らのメインローターから発生したダウンウオッシュ、
下降気流に入り込み、上昇出来なくなる現象は
古くから知られていました。
特に、昔の2枚ローターでゆっくり回転するベル47G
のようなヘリコプターでは、この現象に陥りやすいと
されていました。
しかし、最近の4枚ローターや5枚ローターで高速で
回転させるヘリコプターでは発生しにくい現象として
あまり注目されていなかったようです。
こうした現象に陥った場合には、機首を下げて急降下
し、回転翼の揚力を回復させて脱出する方法が
採られるようですが、高度が低かった場合、あるいは
今回のケースのように救助中のホバリング状態の
場合は回復はほとんど不可能です。
今回の事故は、山岳救助で出動したヘリコプターが
沢のV字状の地形でホバリングしていた際に発生
したもので、山岳地帯特有の気流とV字状の地形
という悪条件が重なって発生した可能性が指摘され
ています。
事故原因は今後の運輸安全委員会の究明を待たねば
なりませんが、いずれにしても、今回の事故でパイロット
と救助隊員5人の尊い命と、滝つぼに転落し救助を
待っていた女性登山者の命が失われたわけで、
山岳救助の過酷な現実に胸が痛みます。