2009年04月14日
私のラジオデイズ71
すでに故人となられた作家の中村武志さんの
お宅にインタビューに伺った時の事です。
中村さんはとんでもない格好で玄関口に
現われました。
中村さんは「目白三平シリーズ」などの作品で
知られたサラリーマン出身の作家です。
東京間借人協会を立ち上げ、その会長におさまって、
東京の住宅事情や住宅問題を広くアピール
するなど、当時、マスコミに引っ張りだこの作家でした。
都内にあるお宅に伺うと、中村さんは何と!
素っ裸で玄関口に現われました。
昼間からお風呂に入っていたところを伺って
しまったのでした。
もちろん、約束の時間通りの訪問でしたが・・・・
タオルで大切なところを隠して再び現われると、
いきなり千円札を数枚渡されました。
「きみ!すまんがこれでそこの角にある酒屋に行って、
弁当とビールを買って来てくれ!」
玄関のドアを開けたとたんに、いきなり使い走りです。
仕方なく、重たいデンスケ(録音機)とマイクを
持ったまま、近くの酒屋に行ってビールを
購入しました。(弁当は2人分用意してありました)
酒屋のご主人は、取材中にビールを飲むなど
不謹慎なやつだ!と思ったことでしょう。
弁当とビールの入った買い物袋をぶら下げて
中村さんのお宅に戻ると、中村さんはすでに
服を身に着けていて居間に案内されました。
中村さんのお宅は少し変わっていました。
居間の中央に地面から生えている大きな木が
ありました。
部屋を作る際、古い椎の木を切ってしまうのは
忍びないと思い悩んだ末、椎の木を囲むように
天井や屋根を作ってしまったのです。
椎の木は一見、天井を突き破って屋根の上に
飛び出しているように見えます。
話の切り出しはこの椎の木にしようと思いました。
ところが、話をしようとすると、先ずはビールで
乾杯となりました。
呑むほどに、酔うほどに中村さんの話は
舌好調となります。
取材の目的は、間借人協会についての話でしたが、
話はいつの間にか椎の木の話や、好きな女性の
話などに飛んでいってしまいます。
酔い潰れないうちに必要な話を伺っておいたのですが、
この日の放送は、多少舌がもつれ気味だったような
気がします。
尤も、ユーモア溢れる庶民派作家の中村さんの
お人柄がよく表れていたことだけは確かでしたが・・・・
編集に一苦労しましたが・・・・・・(笑)