2008年08月10日
私のラジオデイズ41
前回に続いて、完パケ番組の放送事故を
いかにして未然に防いでいたかをお話しましょう。
この方法を初めて知った時には、私も
びっくりしました。
キューシートに記入されている時間よりも
実際の番組の進行が遅れていると分かった時は、
正直、かなり焦ります。
そのまま放送すると、番組は途中で時間切れとなり、
曲やナレーションの途中で放送を終了させなくては
なりません。
(当たり前ですが、次の番組が控えているからです)
こうなった場合は、スプライシングテープの登場となります。
これをどうするのか・・・・・・
これから説明しますが、驚きの方法です。
まず、番組の遅れの程度によって違いはありますが、
ハサミでスプライシングテープを5センチ程切ります。
あっ、そうでした。スプライシングテープの説明をしなければ
いけませんネ!
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、スプライシングテープは
6ミリのオープンテープを編集する時に使用する
薄い粘着テープのことです。(今でも発売されているのでしょうか)
5センチ程の長さに切り取ったスプライシングテープは、
利き手の人差し指の先端に付けて、これをテープレコーダーの
キャプスタンに巻き付けます。
文章にすると簡単なように思えるかも知れませんが、
これが大変な技を必要とします。
テープは正確に平行になるようにキャプスタンに巻き付けないと
大変なことになります。
少しでもゆがんで巻き付けたり、山が出来たりすると音質に
極端な変化が現れるからです。
テープがそこで引っ掛かって、言葉が飛んだり、曲が飛んだり
し、とても放送には耐えられなくなります。
従って、テープをキャプスタンに巻き付ける時は、極度の
緊張を強いられることになります。
うまく巻き付けられたからといって、決して安心はしていられません。
巻き付けたテープの長さによって、番組の進行具合が左右される
からです。
では、テープをキャプスタンに巻き付けるとどうして番組を短縮
できるのか説明しましょう。
キャプスタンはテープレコーダーにとって大変重要な部品です。
テープはキャプスタンによって正確に一定の速度で送り出される
からです。
再生した音声が正常に聴こえるのも、このキャプスタンが
一定回転しているお陰です。
で、テープをキャプスタンに巻き付けると、キャプスタンの直径が
ほんの僅かですが太くなります。
キャプスタンの回転数は変わりませんが、太くなることによって、
テープがその分速く送られることになります。
これが、番組を短縮できる秘密です。
難しいのは、切り取ったテープの長さです。
番組の遅れ具合によって、どの程度の長さにしたら何分程度
番組を短縮できるのか・・・・・
これには相当な経験が必要です。
といっても、事故はそうめったにあることではありませんし、
経験を積むことはそう簡単ではありません。
となると、普段からテープを使って練習をしておく必要があります。
幸いこの時はぴったりと時間内に収まって事無きを得ました。
普段、何事も無く放送をお届けしている裏では、時折、このような
悪戦苦闘が繰り広げられていたのです。
今は昔の話ですが・・・・・・。