2008年05月18日
私のラジオデイズ29
FM放送はステレオ機能と音質の良さが売り物です。
放送の音質をより良いもので楽しもうと、
FMチューナーやオーディオ機器はさらなる
進化を遂げました。
その結果、放送の送り手にとっては少々
困ったことが起きてきました。
先ず、音楽の流し方が変ってきました。
それまでのラジオ放送では、音楽を紹介する場合、
先に音楽を流しておき、イントロに乗せて
曲紹介のアナウンスをするのが一般的でした。
音楽も完奏はせず、途中でフェードアウトです。
ところが、FM放送の場合はこうはいきません。
こんなことをしたら、たちまちリスナーから
クレームの電話や手紙が局に届きます。
従って、音楽はアナウンスにかぶらないように、
完奏させるのが原則です。
これは当時、(今でもあるでしょうが)エアチェックといって、
放送をテープレコーダーで録音しておき、
後で編集して音楽だけを楽しむマニアが多かった
ことから起きた現象でした。
FM放送とオーディオ業界は持ちつ持たれつの
関係だったのです。
アナウンサーにとっても音質の良さは一長一短でした。
体調を常に完璧な状態に保っておかないと、
リスナーにすぐ気付かれます。
風邪をひいたり、寝不足だったりしたら一発で
見破られるのは勿論のこと、心配事など
心理的な状態も見抜かれてしまいます。
こんな有り様ですから、新人時代は基礎発声練習を
徹底的にさせられました。
特に、リップノイズといって発音の際に発生する
唇の触れ合う音とか、口内で発生する言葉の
発音以外のノイズ(ピチャ、ペチャといった音)は、
完璧に取り除くように先輩たちから指導を受けました。
生理現象も大敵でした。
空腹時のお腹のググッグーグー音も悩みの種でしたが、
ある時、クラシック番組の解説を担当していた
出演者がやってしまいました。
音楽を解説中に思わずあの生理現象に見舞われたのです。
先ほどもお話ししたように、当時はエアチェックをしていた
マニアも多く、この椿事というか「珍事」はかなりの方が
録音していたようです。
クラシック音楽の解説中に静かなスタジオに突如響き渡った
発射音、これを高性能のマイクが見逃すはずはありません。
解説者にとっては、まさにバッハのカンタータ「われいずこに
逃れゆかん」の心境だったのではないでしょうか。
実際に何の音楽の解説中だったのかは
定かではありませんが・・・・