2008年05月11日
私のラジオデイズ28
本格放送を始めたFM放送が当時、世間一般にあまり
知られていなかったことを物語るエピソードがあります。
ある番組のスタッフが、親睦を兼ねて伊豆の
旅館に1泊旅行をしました。
昼間の仕事を終えて一行が旅館に到着すると、
旅館の玄関先には何と!「SM東京御一行様」と
書いた歓迎看板が掲げられていました。
「いらっしゃいませ~SM東京御一行様ご到着!!」
てな訳です。
これには参加者一同「何とも複雑な心境だった」と
いいます。
実用化試験局の時代は、FM放送をより多くの
人達に知ってもらおうと、営業部員たちは当時
まだ開発されたばかりの受信機とアンテナを
ワゴン車に載せ、喫茶店や理髪店など人が
集まりそうな場所を廻って、FM試聴会を開いたそうです。
そんな努力の甲斐あって、FM放送は徐々にその
知名度を増していったのです。
もちろん、当時、流行の兆しを見せていたオーディオブーム
も一役買っていたことも見逃せません。
それまで一部のマニアが外国製の高級オーディオや
手作りのオーディオ機器で聴いていた高品質の音楽が
コンポーネントステレオの登場によって、手軽に聴けるように
なったのです。
1950年代の後半のことでした。
それまでキャビネット一体型だったステレオ商品は、
アンプ、プレーヤー、スピーカーとそれぞれ単体化され、
自分の好みのオーディオ機器を買い揃えて自由な
音作りを楽しめるようになりました。
学生時代、発売されたばかりのパイオニアの
コンポーネントステレオを購入して、
狭い部屋にもかかわらず、左右のスピーカーの位置を
変えて音の変化を楽しんだことを思い出します。
やがて本格的なオーディオブームの到来とともに、
パイオニア、サンスイ、トリオといった、いわゆる
オーディオ御三家だけでなく家電メーカーも独自の
ブランドで参入し、本屋さんには、オーディオ専門誌が
並ぶようになりました。
当時のFM放送は、こうした家電メーカーやオーディオメーカー
のクライアントに支えられて発展していったのです。
当時の番組には、「ステレオHi-Fiクラブ」に代表されうように
FM放送のステレオ機能と音質の良さを強調するものが
数多くありました。
音質があまりにも良いため、困ったことも起きました。
この続きは次回に・・・・・