2006年12月21日

長~い長~いつぶやき④

「カァ~レ~エ~♪ カァ~レ~エ~ッ♪ 晩ごは~んはっ、カレ~ェ~♪」
思わずカレーのかぶりものをして歌いたくなっちゃうくらい、苦しみの後の楽しみに思考は一気にシフトしている。
「レッカーも手配していただいてるみたいだし、もうすぐこの場所ともお別れかぁ。」
なんだか名残惜しくなってきちゃうなんて、本当におめでたい性格だ。とはいえ、写真もほどよくいろいろ撮ったから別に写すものもなし。ちょっとダンスのステップでもおさらいしようかなぁなどと考えてはみるが、やはり場所が場所だからそれはマズイし。
「そうだっ。エンジンをかけてチェックしてみよう!」
案外、問題なく走れると思う。が、走れたとしても走る気はサラサラない。が! 原因究明に一役買えるかもしれない。

キーを回して、スイッチオン。『バルルルルンッッッッッ!!!』
「えぇ音やなぁ。」
我ながら惚れ惚れしちゃう。が、ここからが大切な時間。いったい何がどういう変化を見せるのか、じっくり観察せねばならない。まだまだ暖機だが、この段階も見過ごしてはならない。というのも、実は今朝7時前のことを思い起こしていたのだ・・・。


7時前。
「ウッシッシ。今日は天気もいいし、最高だなぁ。あぁ、愛しのバイクちゃん。一緒に茨城まで行きましょうねぇ。」
声をかけつつ国道沿いまでバイクを押し出して、はいっ、10分弱の暖機。良い感じでエンジンも温まり、いざ発進しようとバイクを起こした。その時、いつものようにブレーキレバーを引いたのだが、なんとなく遊び部分が少ない気がした。が、すぐにこんなものかもしれないと思い直し、ユラユラとアクセルを開けてバイクを走らせる。実はつい先日、別のバイクで走行練習していたので、そのバイクのクセが身についてしまったのだと考えたのだ。その後、首都高速に乗るべく国道を走っている最中もやはりブレーキの遊びの足りなさを感じていたが・・・。
「まぁ、後で調整すればいいや。ウッシッシ・・・。」


・・・思い返せば、この楽観がまず間違いだったのだ。この時すでに異常への道に私は乗っていたのだ。だからこそ、暖機中も気が抜けない。
『ドガガガガガっ!!!』
532-43.jpg
突然、バイクが震えを起こした。あっという間に暖機し過ぎてハンドルがバタバタ揺れ始めた。今にも私に飛び掛ってきそうに体を揺らす我がバイクに恐怖すらおぼえた。
「うわっ。待て。落ち着け。どうしようっ。エンジン切るか。いやダメだ。アイドリングを緩めよう。うわっ。爆発しそうな勢いやんっ! 怖くて指を差し込めない。待て、落ち着け。ゆっくり・・・どっちだ・・・アイドリングは・・・右回りだ。右に回そう!」
『ドガガガ・・・ドガドガ・・・トカトカ・・・トットットットットッ・・・』
落ち着いた。いつものステキなエンジン音。
「フゥ~ッ。」
が、もしやと思いブレーキを握ってみる。
「アッ。」
まただ。走ってもいないのに、再びレバーが硬くなっている。ブレーキの遊びはどこへやら。
「来た来た来た。これだよ。あぁ、怖い。また道路のど真ん中で止まるところだったよ。走り出さなくて正解じゃんっ。」
首都高速に4時間居座っていることを正当化するかのような自己満足の答えを導き出した。そしてすぐさまフロントタイヤのキャリパーあたりをジ~ッと覗き込んだ・・・。
141-4116_IMG.JPG
「オォォォォッ!」
なんとっ! ジワジワと片方のブレーキパッドがディスクに張り付く様子が目の前で繰り広げられているではないか。
「なんじゃこりゃ~っ!」
そもそも隙間がハッキリ見えること自体、あまり良い状態とは言えないようだが、その隙間が埋まっていくのはさらに良くないことではないか。写真、写真、写真っ。が、さすがにクッキリハッキリ写すことは不可能であった。せっかくの証拠は動画で残すべきであろうが、それも無理な話。ちょびっと悔しいが、しかし、その瞬間を見られたことは非常に誇れることである。
「語れる。説明できる。」
まぁ、それを説明しても、では何故そうなるのかまでは私には分からない・・・それは専門家の仕事だから・・・もちろん、私も勉強すべきだが・・・。まぁ、まずは状況説明ってものが必要だ。改めて、無駄ではなかったこの数時間に感謝した。

そこへようやくレッカーの連絡を告げるメカニックからの電話。
「僕は行けないんですけど・・・。」
「そんなそんな、大丈夫ですよ。」
「で、レッカーなんですけど・・・。」
「ハイッ! (・・・もう向かってて、まもなく到着かしら。)」
「12時から13時の間に到着すると思います。」
「えっ?」
「あと1時間位かかってしまうんですけどぉ。」
「へっ? あぁ・・・、あぁ、大丈夫ですよ・・・。(なんだ、まだ向かってないのか!)」
が、ここまでくれば、あと30分でも1時間でも関係ないであろう・・・。
「じゃあ、待ってますね。さっき、エンジンかけたんですけど、やっぱりブレーキ固まっちゃいましたぁ。」
「そうなんですか・・・。」
「熱ですかねぇ、振動ですかねぇ。」
「いやあ、そんなことでは貼り付いたりしないんですけどねぇ。」
「あたし、見たんですよぉ! パッドがジワ~ッとディスクに貼り付く瞬間を!!」
「そうなんですかぁ・・・。」
「ハイィィィッ!」
「まぁ、見てみないと良く分からないんですけど・・・。」
「・・・そうですよねぇ。・・・まぁ、そうですよねぇ。」
「じゃあ、あと1時間位で着くと思いますんで・・・。」
「はぁい・・・。バイク・・・よろしくお願いしますね。」
「はい、責任持ってお預かりしますので・・・。」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますっ!!!」

とりあえず、ようやく時間が見えた。あと1時間か2時間で救出される。まさか正午を越えるまで首都高速の上にいるとは思わなかったけれど、あと少しの辛抱だ。しかしだ! もうすることが本当に何もない。できることは寝て夢をみること。もしくは空想にふけること。元来、空想大好きだし、思い出に浸ることや思い出を頭の中で整理することが好きだから、良いといえば良いけれど。
「何を想像しようかなぁ・・・。」


・・・・・・いやはや本当にここからの1時間ちょっとのなんと長かったことか。サッサと誰か呼んで私だけでも下界に下ろしてもらえばよかったと何度となく後悔めいた感情がよぎりましたよ。しかし、次の瞬間には、「いや、愛しのバイクを置いていけるものか。」と我が行動に自信を復活させるのでありました。

→次回、いよいよ救出へ!!! 

| 19:42 | コメント(0) | カテゴリー:木次真紀

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