2015年07月29日

最大離陸重量

 調布飛行場でおきた小型機の墜落事故。今度の事故で民家に住む全く無関係の市民が一人巻き添えで死亡したことは大きな問題です。そもそも調布飛行場周辺は住宅地が多く、滑走路周辺での緊急事態に対応できない安全マージンの少ない空港であることも見逃せません。

 さて今回の事故原因については、まだはっきりと解明されてはいません。警察の検分で焼け残ったエンジンの回収は見込めそうですが、そこから墜落前のエンジンの運転状況が推測できるのかどうか?果たしてカタログどおりの性能が正しく発揮されていたかどうかが、今回の事故に繋がった可能性もあります。

 エンジンのパワーがどれほど重要なのか?それは離陸する飛行機の重量と密接な関係があるからです。

 墜落した単発プロペラ機「PA46-350P型」(通称マリブ・ミラージュ)、機体番号JA4060は小型機ではセスナと並ぶ老舗、パイパー社が手がける、広く普及しているものでした。事故機は3列シートの6人乗り、国産ミニバンよりちょっと幅の狭い胴体に機長以外の5人の乗客を乗せることが出来ます。その最大離陸重量:1,968 kg。単体重さ約1190kgの機体に燃料と乗客の体重などを合算した離陸時点での許容される最大の重量のことですが、この数字はいつでもどこでも同じものではありません。

 空港の標高によっては空気の大気圧(ということは空気の密度)が違うので、標高の高い空港ほど揚力は減り、最大離陸重量も少なくなります。加えて気温の違いも考慮しないといけません。普通は23度近辺のデータで表示される最大離陸重量ですが、気温が上がればれも空気の密度を減らすことになり、揚力は減ります。

 そしてもうひとつ、最大離陸重量を左右するのはエンジンの最大出力、パワーを上げれば多くの重量を搭載できますが、そのエンジンも高温になると空気中の酸素量が減るので出力は減少します。民間のエアラインでは、空港の立地、乗客の総重量と貨物積載量などを常に計算していて、出発の都度、最大離陸重量を計算しています。このデータが離陸時の上昇決断スピードや操縦桿引き起こしの速度を細かく左右し、パイロットは毎回この数字を頭に叩き込んで離陸に臨みます。

 ミドルマーカーという滑走路中央のラインを超える時点で速度=V1(離陸決心速度)に達していなければ離陸は強制的に中止!直ちに制動しなければなりません。逆にこの速度を超えてミドルマーカーを通過したら、もう空に向けて飛び立つよりほかに安全な道はありません。
(1996年のガルーダインドネシア機、福岡空港事故ではこのルールに反して離陸を断念、滑走路を飛び出し死傷者を出す重大な事故を起こしています)

 さて、今回の事故機には機長ら5名が搭乗し大島までの2往復分+片道の燃料(推定300g以上)が搭載されていました。
少なめに見積もっても1900kg近い重量になるはずです。もっともパワーの必要な離陸滑走中にエンジン性能がカタログどおりの350馬力であったかどうか?いったんは離陸できたので、引き起こし速度(V2)までは加速できていたはずです。ではその後の上昇中に充分な出力が出ていなかったのか?あるいはエンジン以外の原因で上昇が続けられなかったのか?

 まだまだ、今日の時点では不明な点が多く原因を推し量るのは難しい段階のようです。それでも今の段階でなぜ遊覧目的の飛行が禁じられた調布空港で航空従事者でない3人の乗客を乗せて大島往復を目論んだのか?なぜ、二往復分以上の燃料を搭載する必要があったのか?わからない点も残っています。幸運なことに搭乗者のうち3名が負傷しながらも生き残っていて、これからの聴取でこうした疑問が解明されるかもしれません。それが事故原因とどう繋がるかは、やはり今後の捜査を待たなければなりませんが・・・・・

今朝のJTMR"モーニングEYE”でおしゃべりした内容に少し書き加えてご紹介しました。

| 22:19 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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