2012年07月01日

国内空洞化の先にあるもの

この数十日の間で、自動車産業界に流れたショキングなニュースは枚挙に暇がありません
ちっとも改善の兆しが見えない円高環境は自動車工業のあり方を根底から覆してしまうことにもなりかねません。

トヨタが北米向けヤリス(日本名ヴィッツ)の生産を仏に移転するというニュースは日産、三菱に次ぐリッターカー生産の(部分)海外移転と云うことを印象付けました。

日産マーチは既に神奈川/追浜工場での生産をやめてタイ工場に全面移管。
三菱も今度の新型ミラージュからはタイ製となります。トヨタも商用車のライトエースは現行モデルから既に
海外移転を済ませており,現状の円高水準と,少子化を考えると
百万円前後の大衆車、商用車生産については、もはや国内生産するのは厳しい状況になったことが明白になりました。

雇用は当面維持されるとのことですが、国内の産業が
こうして空洞化、海外流出していく流れは、もう止めようが
ないようです。果たして日本のエコノミーカー、大衆車マーケットは
次の4,5年でどう変化してゆくのでしょうか?


7月第4週もまたまた,驚くようなニュースが相次ぎました
ひとつはレクサスRXの生産カナダ移管
もうひとつはサイオンxb,日産キューブの北米撤退です

レクサスの企画が生まれた頃、日本は初めて経験する未曾有の円高のまっただ中でした。北米向けに利益率の高い高級乗用車の生産が急務と考えられ、そこで生まれたのが4万ドルクラスの上級車レクサスLS(初代セルシオ)でした。
ライバルのSクラスや7シリーズに較べれば破格のバーゲンプライスでした。が,瞬く間に全米で人気ブランドに成長。日産インフィニティ、ホンダアキュラも同じ経緯生まれています。

時あたかもバブル時代のど真ん中。日本市場でも
シーマが飛ぶような売れ行きで販売台数を伸ばして行った頃のこと。
90年代,円高は90円台にまで進み,(95年には)瞬間的に79円台という
超円高時代を迎えています。この間レクサスブランドはそのほとんどが
高い品質を保証出来る日本国内生産。一台あたりの利益が高いこのクラス
だからこそ円高をも乗り越えたのでした。

それから20年,もはや国内でのレクサス生産も海外へ流出してしまう事態となりました。
RXの穴埋めはES(日本名ウィンダム)が担ってくれるので,
国内生産に大きな穴は空きませんが・・・この流れが加速してゆくのか,一時的なもので終るのか。

勿論後者をのぞむのはいうまでもアリマセンが。

そしてサイオン、キューブの撤退が意味するものは・・・・・

ライバル車、韓国勢の台頭です。同クラスに参入した韓国車「ソウル」
毎月,1万台を上回るセールスを記録して,同クラスのxb(カローラルミオン),
キューブの販売がガクンと落ち込みました。・・・・・・・・・・これは北米市場での話です

では,日本市場で同じことが起きないと断言出来るでしょうか?


何年も前にフォード資本の韓国車が日本に輸入されたことがありますが
評価は散々,ヒュンダイ、サムソンもメーカーとして上陸を試みましたが
これまでに思うような成果をあげられなかったのが実状。
世界の市場では韓国車の猛追振りは驚くばかりで、あっという間に浸透しているのが現状です。


では,これからの日本市場はどうでしょう?

実はバイク、スクーターの市場ではもうとっくに
海外移転が進んでおり、町で見かける新型原付バイクの大多数は
もはや日本国内生産ではありません。

実は先日発表されたホンダを代表する二輪車スーパーカブのモデルチェンジは
その裏側にスーパーカブ(50)国内生産の終焉,と云う大きなニュースが潜んでいます。
日本の高度成長と共にホンダを成長させて来たカブがついに,中国からの逆輸入に
取って代わられることになったのです。顔立ちもASEAN諸国で受けの良い直線基調の
デザインに統一されて,故本田宗一郎さんの脳裏にはない,新顔のカブが販売される
様になります。ホンダのオヤジさん、天国からどうご覧になっているでしょうか?


台湾、中国製のバイクが急進してきたのもこのところの
顕著な現象。ここで予想されるは韓国勢4輪車の大攻勢です。
海外移管で韓国産の小型車との価格差は一層縮まり,
激しい競争が予想されます。こうなるとますます,
国内で小型車を生産するメリットは少なくなってしまいます。

テレビ、半導体の分野ではすでに現実となっている韓国製品の脅威

クルマの分野でも遅かれ早かれ、同じことが起こるのは明白。

では国内メーカーはこの未来にどう向き合えばよいのか・・・・・・

日本企業が得意としてきたのは、かつては欧州の模倣でした
安価な良質品で、モデリチェンジを重ね、信頼性を上げるというやり方。
これを学んで習得してしまったのが韓国メーカー。
もはや、価格競争では太刀打ちできません。

携帯電話同様、日本独自の規格でガラパゴス化を上手く促進している市場があります
軽自動車です。

国内マーケットのほぼ三台に一台はこの660ccのミニカーが占めており
海外からの参入もはかばかしくありません。3.4mと云う全長はまだしも
1・5mに満たない全幅というのは日本にしかない規格で、このサイズにクルマを
あわせることが,ひとつの参入障壁にもなっているかもしれません。勿論660の
エンジン排気量から800kgあまりの車重を動かす出力を絞り出すのも、また
至難の業。逆に軽自動車をインド辺りの新興国向けにリッターカーに仕立て直すのは
いとも簡単。スケールメリットを簡単に行かすことが出来るのも日本の軽自動車の強みです。

国内産業を保護するため関税をかけるのは良くあるテですが日本は違います。

世界でも類を見ない厳しい排ガス基準や,燃費基準に基づく税制優遇。アメリカもこのテを使います,
安全基準の強化でことごとく大型のアメリカ車に有利な基準を定め,重く大きな
5マイルバンパーを義務付けられた日本車は,一時重量増加やスタイルの悪化を強いられました。
厳しい排ガス規制を一番乗りでクリアしたのはホンダシビックのCVCCエンジンで,その後訪れた
オイルショックでシビックはホンダを世界有数のメーカーに押し上げます。小型トラックに課せられた
25%の関税はトラックベースのRV乗用車というカテゴリーを創出し,世界の自動車メーカーが
一様に採用する車種(SUV)に育って行きます。

日本の規制は輸入車排除に繋がり,米の規制は
日本車育成に繋がっているところが面白いところです。

付加価値ではどうでしょうか?ハイブリッドシステムの普及?
究極に達したともいえる燃費向上テクノロジー、
競争は激しさを増すばかりですが、もはやこれらの技術なしには
日本製の小型大衆車の生き残る道は無いといっていいでしょう。

燃費という付加価値のほかに日本のクルマが競争力を手に入れるとすれば
生産技術を武器にした魅力あるデザイン。これしかありません。
初代ヴィッツのデザイナーは
ギリシャ人でしたが、今後も世界に影響を及ぼす魅力あるスモールカーが
日本から生まれることに期待したいと思います。

さて、日本の自動車工業に明るい兆しは見えているのか?

ひとつの鍵は環境対応技術です。

トヨタが世界初の実用ハイブリッド車を市販化してから
既に15年。日本ではいちばん売れるクルマに成長しました。ホンダ、日産も独自の手法で
ハイブリッドを実用化、世界にも希なハイブリッド王国になろうとしています。排気ガス規制で
輸入車が青息吐息だった70年代が思い起こされます。

日産が8月に発表したSーハイブリッドシステム、これがいま注目のエコ技術です。
エンジンとモーターをパラレル配置して遊星ギアで繋ぐトヨタ方式は他メーカーが手を出せず,
ホンダはいわゆるマイルドハイブリッドでエンジンと常に同期回転させざるを得ませんでしたが
日産は,まずフーガで断続式クラッチを利用したパートタイム,タンデム方式で第三のハイブリッド化を達成。
そして今度の最新型ではオドロキの技術で現行生産車のハイブリッド化を達成しているのです。

まずは新型セレナのエンジンフードをあけて中をのぞいてみましょう。

おやおや,発電機もセルモーターも
ほぼ今まで通りの見慣れた形。思わずちょっと大きめの2台目の鉛バッテリーの存在に気づかないまま
フードを閉めてしまいそうです。

これが高価なリチウムイオンやニッケル水素電池に代る駆動系電源。
コストもかなり安上がりに済んでいる様です。で,何処がハイブリッドなのか?

実は既存のパーツの寄せ集めでハイブリッドに仕立てているところがミソ。発電機でブレーキングのエネルギーを
回生して鉛バッテリーに蓄積。加速時にはモーターを駆動してパワーアシスト。今まで捨てていた運動エネルギーを
蓄積,再利用出来る様にしたところがハイブリッド以来の画期的な(発明)です。

日産はこれまで大衆車と呼ばれる150万円ゾーンの
クラスに決定的なエコカー技術を投入出来ずにいました。なので,安価なコストで造れるハイブリッドは最大の課題。
今回はセレナに搭載されましたが,順次安価なクラスに展開してゆくはずです。

九月に入って新世代に移行したスズキのワゴンRも同じ発想を元に、減速で失われていたエネルギーを
アクセサリー類の電源用に発電することで回収し、エンジンの発電付加を軽減させています。
今まで捨てられるのみだった、巡航中の運動エネルギーを回収できれば、ハイブリッドやevが得意としていた
エネルギー回収という金山をガソリン車も手に入れることになるわけで、今後他のメーカーにも
どんな形で波及して行くか要注目です。

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