2010年12月28日
ブック・オブ・ザ・イヤー
さて、今年も様々な本がベストセラーになりましたが、
皆さんはどのような本がベストだったでしょうか?
私のブック・オブ・ザ・イヤーは講談社文庫のこの小説
「永遠の0(ゼロ)」です。
「ゼロ」という言葉に過剰反応する航空マニアの
悲しい性で、思わず手にとってしまったのが
運の尽き・・・・・・・と思いきや、これが最高の
感動巨編でした。
ある零戦パイロットの物語ですが、当の本人は
作品の中には一切登場しません。
その実像は全て関係者の証言から語られます。
天才的な操縦技術を持つ零戦パイロットが、
「娘に会うまでは死ねない。妻との約束を守る
ために」と、自らの命を守り通したにもかかわらず、
結局は壮絶な最期を遂げる・・・・・・・・
その謎を突き止めるために戦友たちを訪ね歩く
パイロットの孫の姉と弟・・・・・・・・
あっ!と驚く驚愕のクライマックスに人目もはばからず
思わず涙してしまいます。
まさに、読んだ人だけがこの感動を味わえる最高の
エンターテイメントです。
戦記ものはノンフィクション以外はほとんど読んだことが
ありませんが、この本は特別でした。
この本の中には何種類かの第二次大戦中の戦闘機の
名前が出てきますが、ひとつおやっ?と思ったことが
あります。
それはチャンス・ヴォート社のコルセア戦闘機のことを
シコルスキーと表現していることです。
コルセアと言えば、2000馬力級のエンジンを搭載し、
零戦を圧倒した戦闘機で、4メートル近くある大直径の
プロペラを回す際に先端が地上に接触しないよう、
主翼の根元を逆ガル状と言って、カモメの翼を逆さま
にしたように折り曲げて胴体の位置を高くした独特の
スタイルをしています。
戦時中は、チャンス・ヴォート社のほかにグッドイヤー社や
ブリュースター社でも製造が行われましたが、
シコルスキー社で製造が行われたという話は聴きません。
ではなぜシコルスキーなのか・・・・・・・・
この本の著者は相当緻密に当時の戦闘機の情報を集めた
ものと思われます。
実は、チャンス・ヴォート社はシコルスキー社と提携していた
時期があり、当時、日本の一部ではコルセアのことを
シコルスキーと呼んでいたようです。
この部分には別の意味で感動しました!
いずれにしても、戦争は戦記武勇伝として決して賛美される
ものではないという現実を改めて思い知らされる最高傑作です!
作者はこれがデビュー作となる放送作家の百田尚樹さん。
映画化が待ち望まれるところです。
その際は、それぞれの戦闘機の型式の違いをしっかりと
表現して欲しいものです。
(重要なポイントなのですから・・・・・・)