2008年07月27日
私のラジオデイズ39
前回の続きになりますが、キャプスタンに切れたテープが
巻き込まれるとどうなるか・・・・・・・
それはそれは、恐ろしいことになります。
キャプスタンというのは、カセットテープレコーダーにも
付いている装置で、テープを送り出す駆動軸の事です。
ゴム製のピンチローラーと対になっていて、テープは
このピンチローラーとキャプスタンの間に入り、
一定の回転を行うキャプスタンにピンチローラーが
密着してテープを送り出します。
ニュースを読み終わってスタートさせたCMテープは、
不幸にして切断し、このキャプスタンに巻き付いてしまったのです。
テープがキャプスタンに巻き付くと、当然のことながら、
キャプスタンの直径が巻き付いたテープによって徐々に
太くなります。
キャプスタンが太くなると、同じ回転数であっても太くなった分、
テープを送り出すスピードが段々と早くなってきます。
そうなるともうお手上げです。
CMの長さは1分30秒もありました。
始めのうちは分かりませんでしたが、10秒、20秒と放送される
うちに、CMのナレーションが段々と早口になり、そのうちに
とても聴いてはいられなくなりました。
「〇〇製作所は、ガスクロマトグラフを始め、様々な計測機器で
皆さまのお役に立っています。
特に産業分野における・・・・・・ケロ、ケロケロ・・・・・」
その後はまさに「ケロ、ケロケロ、ケロケロケロ、ケロケロケロケロ・・・・」
といった状態です。
スタートして30秒ほどで聴くに堪えなくなり、CMの途中でしたが
アッテネーターを下げて止めました。
私も驚きましたが、このときラジオをお聴きになっていた方は、
もっと驚かれたと思います。
残りの1分間は、お詫びのアナウンス「ただいまの放送で大変、
お聴き苦しい点がありましたことをお詫び申し上げます」をして
あとはクッション音楽で処理しました。
テープが巻き付いたキャプスタンは、まるで小さなコマのような
状態となっており、テープを外そうとしてもキャプスタンは手で
回転するような代物ではありませんので、なかなか外せません。
仕方なくカッターナイフでテープを切ることにしました。
この処理が、後々、やっかいな事態を招くとも知らずに・・・・
事の一部始終は、翌日、泊まり明けで上司に報告しました。
事故の状況としては不可抗力で止むを得ないとして、
一応、注意処分を受けましたが、私よりも営業担当が
大変だったと思います。
で、その後日談ですが、実は切断したテープは収録した
生のテープ(マザーテープ)だったことが分かり、
他に予備のテープがなかったため、先輩アナがスタジオで
もう一度収録し直すことになりました。
その日のうちに新しいCMテープが出来上がりましたが、
上司や先輩アナ,それに営業担当らに頭を下げ通しの
散々な一日でした。
コンピュータ化によって自動処理している現在、
こんな放送事故は起こり得ませんが、
古き良き時代のFM放送の黎明期に起きた
実際の出来事でした。
この時のスポンサー様、誠に申し訳ありませんでした。
ではまた次回に・・・・