2007年03月18日

ヒコーキの足回り

飛行機の足回り(降着装置といいますが)というのは、
まことに厄介なもので、飛んでしまえば無用の長物、
離着陸には無くてはならないものです。
飛行機はこの矛盾を常に抱えて、存在し続けています。
今回の高知空港でのDHC-8の胴着で、飛行機と
脚の関係について改めて考えさせられました。

1903年、ライト兄弟が史上初の動力飛行に成功した時の
「フライヤー号」には、車輪の代わりにスキッドと呼ばれる
ソリがついていました。
初飛行の際は地面にレールを敷いて、このレールから
飛び立ちました。
1906年にヨーロッパで最初に動力飛行に成功した
サントス・デュモンは、先尾翼と呼ばれる通常の飛行機の
デザインとは全く逆の尾翼が前にある飛行機で初飛行を
行ないましたが、この飛行機には車輪が付いていました。

デュモンはブラジル人で、大コーヒー農園の御曹司でした。
フランスに留学した折、ヒコーキ熱にとりつかれ、
豊富な資金源をバックに飛行機作りに励んで、航空史に
名をとどめました。
それまで死を覚悟の無謀な行為だった飛行への挑戦に
車輪を付けたことで、デュモンの生還への強い意欲が
感じられます。
余談ですが、カルティエの時計の「サントス」は、
カルティエがデュモンに贈った時計から名付けられています。

1931年10月、青森県三沢市の淋代海岸から機体全体を
真っ赤に塗った小型単発機が飛び立ちました。
2人の飛行家を乗せたこの単発機が向かった先は、
アメリカ・ワシントン州のウェナッチ。
彼らは41時間10分で無事ウェナッチに到着し、ここに
世界初の太平洋無着陸横断飛行が実現したのです。

この飛行の際、彼らはとんでもない計画を思いつき、それを
実行しました。
それは、機体を軽くして燃料を節約するために、
淋代海岸を離陸して間もなく、ベランカ単葉機
(ミス・ビードル号)の車輪を切り離して海に捨て、
着陸の際は胴体着陸することでした。
ベランカ単葉は、高翼タイプ(翼が胴体の上に付いており
低速でも安定性がいいので胴着しやすい)なので、
こうした無謀とも思える計画が可能だったのでしょう。

今回の高知空港での胴体着陸事故は、機長の冷静沈着な
行動が大事に至らずに済んだ第一要因ですが、
機体が高翼タイプで安定性が良く、地上とエンジンや
プロペラ、燃料タンクなどとのクリアランスが大きかったことも
安全着陸につながった要因だと思います。
(勿論、故障が主車輪の片側ではなく前輪だったことも幸い
しています)

ボンバルディア社の前身である、デハビランド・カナダ社は
伝統的に双発・高翼タイプの航空機を開発していますが、
その初期の機種に「ツインオッター」という小型機があります。
この飛行機は引っ込み脚ではなく、固定式の車輪が付けられて
います。(こうすれば、脚の出し入れは無くトラブルは皆無です)
いっそのこと、Q400も固定式車輪にしますか。

| 10:30 | コメント(3) | カテゴリー:田中穂蓄

コメント

田中さん、お疲れさまです。
自分は、この日仕事で、その後もこの事故、映像では見てないのですが、当日、M+・12時東海林さんのニュースの間、及び夜のJAM、両方とも田中さんの解説によって理解しました…
自分は、今迄一度も航空機に乗った事がありませんが(家族は誰もないはずです…)、機長の判断、優秀さと、色々好条件が揃った事が、無事安全着陸につながり、事故を防げて安堵しています。
自宅と、空港が離れすぎていて、逆にアクセスが悪い、というのもありますが、個人的には、20才の時に起こった、日航機事故が頭から離れず、飛行機には抵抗があります(こう言うと、田中さんの思い入れを否定してしまう事になりかねませんが…)
自分も、和菓子販売をなりわいとする身として、お客様の安全、安心に常に気を配り、今回の事件と合い通ずるものに、高く意識を持ち続けていきたいと考えます。

投稿者 ちなみん : 2007年3月18日 13:37

田中さんこんにちわ
JAMでお名前を聞いて半蔵門の方で耳覚えのある、多分それほど多くないと思われるお名前ですのでざっと検索してこちらのBLOG(引っかかったのは宗谷の話題)にまでたどりつきました。
また、航空機に造詣の深い方だったとは存じ上げませんでした。
さて、
ノーズギアだけだったのでトラブルの中では対処しやすい部類だったのだろうな…と思っていましたが、とにかく大事に至らなくて良かったと思います。
乗客が自分の荷物を普通に持って降りてきている様子を見てほっとしました。
滑走路にまかれた消化剤があまり効果がなかったというか、すぐに散布エリアからはずれてしまいましたけど、あのようなものなのでしょうか?

投稿者 ねりまのぱくさん : 2007年3月18日 17:07

ねりまのぱくさん、ありがとうございます。
書き込みが遅れてしまい申し訳ありません。
さて、消火剤の件ですが、滑走路にはあらかじめ
発火を防止するための消火剤が散布されていました。
航空災害には泡消火剤やハロゲン化物消火剤などの
化学消火剤が用いられますが、これらの消火剤は
酸素を遮断して消火するタイプのものなので、
機体が発火しなければ消火剤を散布する必要は
ありません。
散布状態がしょぼかったのも、必要以上に撒くことは
なかったからでしょう。
その後も、ボンバルディア機のトラブルが続いて
いますが、ボルトの緩みだけではなく整備体制の
緩みも見直して欲しいものです。

投稿者 ホズミ : 2007年3月25日 09:31

■コメントはこちらへ


保存しますか?
(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)


2020年 7月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

バックナンバー

カテゴリー