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2007年03月29日
第050回/植木さんのダメ出し。
070330.jpg 個人blog用に作った写真なんですが、こっちにもアップしちゃいます。コレ、ワタシの古い知り合いであり、「宝島を一緒にびーくうコンビ」でもある佐川秀文さんが1991年に編集した雑誌「合点だい!」の表紙の植木さんです。中面には長〜いインタビューや植木さん年表のほかに安斎肇さんのお父さん(肖像画家です)が描いた植木さんの肖像画も掲載されておりました。
【渡辺祐秘密の小部屋】
http://d.hatena.ne.jp/
dothemonkey/
  どうしようかなと思ってはいたのだが、やっぱり植木等さんのことを書こう。

  ワタシは現在47歳。この世代は実はおっさんのようでクレイジーキャッツには「乗り損ねた」世代なのであります。例えばクレイジーキャッツが一躍お茶の間のスターとなったテレビ「おとなの漫画」は、フジテレビ開局と同時スタートなので1959年(昭和34年)放送開始。作家はもちろん青島幸男さん。でもってワタシはこの年生まれ。見ているんでしょうけど覚えてません(笑)。そしてザ・ピーナッツがハナ肇さんに「おとっつあん、おかゆができましたよ」と言っていた「シャボン玉ホリデー」は1962年〜1972年の放送。渡辺祐はと言えば3歳〜13歳。これまた見てはいるし覚えてもいるんだけど、いわゆる大ファンというわけじゃなかった。ちょっと幼かったですね、ボク。でもまあ「スーダラ節」とかクレイジー・ナンバーはその頃に自然と体得しているのでほとんど歌えますけんども。

  衝撃を受けたのは、たぶん高校の頃。学校から帰ってぼうっとしているような時間帯とか日曜の午前中とかにテレビで映画シリーズを見たのだと思う。やってたでしょ、ヘンな時間に日本のプログラム・ムーヴィー。「社長シリーズ」とか「駅前シリーズ」とか(藤村有弘が好き)。たぶんそれ。その映画でガツンです。面白かったもの。バカバカしくて(笑)。

  かくしてドリフ世代一号機(荒井注時代が好き)であるワタシにとってクレイジーキャッツは、「洒落たおじさんたち、でもちょっと古いかも」という位置づけにあったと思っていただきたい。お笑い物心がついた頃には、コント55号もいてドリフターズもいてマチャアキもいましたから。

  以上のことは自分用の備忘録みたいなことなので、まあどうでもいいのである。

  ワタシは植木等さんにダメ出しをされたことがあるのだ。あれはRAG FAIRがデビューしたばかりだったので恐らく2001年の秋のこと。弊社(編集プロダクションやってます、いちおう)にワタナベエンターテインメントさんから新年広告制作のご依頼があったのである。いわゆる「ナベプロ」として業界のパイオニアでありながらも新スタートを切ったワタナベエンターテインメントをアピールする意味で、所属タレント最古参である植木等さんと最若手であるRAG FAIRが一緒に写真におさまるというコンセプト。わかりやすい。

  その撮影の当日は、ちょうど「かくし芸大会」の収録日。なにしろRAG FAIRにはスケジュールがいっぱいあるけど、植木さんは忙しいのである。ワタシと弊社・君塚とカメラマンの円山正史さんはお台場のフジテレビに入って広い廊下でセッティング。そこまでは仕事ですからさくさくやってますが、さすがに植木さんがもうすぐご登場になる、となると緊張が走る。

  そこに植木さんが颯爽と現れた。「かくし芸大会」の収録の合間なのでもちろん審査委員長のあの純白の紋付袴姿でいらっしゃる。颯爽なのである。その颯爽のまま事務所スタッフと軽く談笑しながら「はい、どうも」という感じで所定の位置へお座りになる。すっと顔を上げるとすかさずひとこと。「さ、撮りましょうか」。ワタシはそこで今日の撮影の内容などを説明する役割だったのだが、もうね、そんなことは気にしてないのだ、植木さんが。当たり前だが猛烈に取材慣れしているのだ。撮られた写真が5万枚なのだ。プロなのである。

  植木さんを囲こむようにRAG FAIRに並んでもらって速攻撮影開始である。飛ばせシンクロ、回せモードラ、フィルム・チェンジで流れ止めるなアシスタント(注:デジカメ以前ですから)。いいぞ、円山カメラマン。師匠・三浦憲治氏ゆずりの「ワン・ツー・ハイッ!」のかけ声が、いつもよりちょっと弱気な気もするが(苦笑)。そこまではよかったのである。撮り始めて少ししたところで植木さんが笑いながらこうおっしゃった。

「いっぱい撮るねえ」。

  いかーん。植木さんはなにせ収録の途中なのである。時間がない。そしてそれ以上に「撮られるプロ」なのだ。重ねてこうもおっしゃるのである。「短くね、パッと撮ってもいいのがあるのが腕の見せ所でしょう」。

  もうね、死ぬかと思いましたよ、ワタシ。だってね、そこまでの枚数じゃ、どう考えても不安。いい写真が無かったときにはもう一度死にたくなるのはこっちなのである。しかし、ちょっと待てよ。植木さんは笑ってもいるのだ。笑いながらダメ出しをしてくれているのだ。おまえら頑張れよ、ということなのだ。えーい、ダメ出されたんだからダメで勝負だ。

  結局のところ、ワタシと円山カメラマンが明るい笑顔を絶やさず「植木さん、そこをひとつ、もうワンロールお願いします!」と明るいお願いを重ねに重ねて事なきを得たのである。ダメ出しされても簡単にはへこまないところがダメ人間の生きる道なのである。後輩風を吹かしまくりである。あ、いや、円山さんはいいカメラマンですよ。ダメじゃないですよ(笑)。でもね、それとこれとは話が違うのである。誤解の無きよう。

  撮影終了。植木さんは「はい、ご苦労さん」という感じで、何ごともなかったかのように、もちろん颯爽とスタジオに戻られた。その間、おそらく20分ぐらいであろうか。

  後日、撮りに撮った写真を見て驚いた。新人で人数も多いので仕方がないのだが、RAG FAIRには「これぞ」という表情のカットが少ないのに、植木さんは、ほぼ全カットがOKテイクだったのである。

  生涯で撮られたであろう5万枚のOKテイクの、その何枚かに立ち会えたことを誇りに思います。ご冥福をお祈りいたします。

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TASK BAR blog staff | 17:08 | カテゴリー:TASK BAR


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