2022年07月08日

衝撃、走る

西田敏行が半世紀も前に物まねの十八番にしていたのがエルビス・プレスりー
文字通りアメリカを代表するロックnロールのキング、スーパースターで孤高の存在。

そんなエルビス,EPがトラック運転手からいかにして大手レコード会社との契約に至り、スーパースターの座をほしいままにしたのか?
1950年代のカラフルなアメリカの風景を見事に再現しながら、映画はエルビスの成長と苦悩、時代に翻弄されるスーパースターの胸のうちを探ってゆきます。
時は1960年代、JFK、キング牧師、ロバートケネディ暗殺、繰り返される惨劇はエルビスの生活や精神にも少なからぬ影響を与えていました。
日本公演がプランだけで実現しなかったことも、このストーリーの中ではセキュリティに不安があったスタッフの疑念が一因とされています。
そして愛する妻との別離と薬物依存、老いへの不安。エルビス自身人気はつかの間のものと自覚していました。

晩年は太りすぎて、ドーナツの食べ過ぎで?いろいろに死因が語られましたが心臓発作で早世する42歳という年齢はEPにとって、天命だったのかもしれない、映画を見ていてそんな気がしてきました。
ハワイから衛星生中継で日本にも放映されたエルビスオンステージ,CCライダーのイントロにR.シュトラウスのツァラトゥストラはかく語りきをもって来る辺り、その迫力と威厳には圧倒された思い出があります。

プロモーター役を熱演したトムハンクスだって当然リアルタイムでEPの人気は見ていたはずで、そのカリスマ性は十分以上に理解している筈。役に惚れ込んだかのような力演ぶりが印象的でした。
無理やり例えるとすれば加山雄三に石原裕次郎を足したような大スター、終盤で聞かせた歌声は確かに誰も真似することのできない、説得力のあるものでした。
でも、この映画の凄さをわかってもらえそうな年代は、少なくとも60代以上に限られてしまうだろうことが残念でなりません。

エルビスの世界ツアーはセキュリティの問題から実現することはありませんでした。
彼の全盛期、アメリカは度重なる暗殺事件に震えあがり、エルビスも殊更心を痛めたであろうことは想像に難くありません。

この映画を見た翌日、安倍晋三元総理大臣が海上自衛隊員だった男に銃撃され、深刻な重傷を負って亡くなったというニュースが飛び込んできました。
エルビスの時代にこうした衝撃的なニュースをアメリカ人は幾度となく目にしてきたのです。暴力への怒り、銃社会への疑問、エルビスは歌うことで人々の心を癒そうと心血を注ぎます。

映画のラストで披露される晩年の歌声は、そうした様々な思いの詰まったもののように聞こえてきました。
エルビスの訃報を伝える真夏のニュースはあまりにも突然でその衝撃は今でも忘れられません。
あの日の衝撃を再び思い出すような今日の衝撃的なニュース。まさかこんな形で元首相の命が絶たれてしまうとは!!

| 17:53 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦


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