2022年05月18日

佐藤究著:テスカトリポカ(煙を吐く鏡)

音楽に例えるならばデスメタル
この165回直木賞と第34回山本周五郎賞·受賞作品を一言で言い表わすとしたら、そんな形容がぴったりかも知れない分厚い一冊です。

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川崎、ペルー、メキシコシティー、ジャカルタと舞台も登場人物も目まぐるしく入れ替わるものの、その背景には麻薬販売に携わる闇社会が見え隠れする。

ジャカルタの街で、親類縁者を皆殺しされた元麻薬密売組織の大ボスと医療界を追放された闇医師が出会う。
この2人が手がけることになるのが麻薬よりもっとイイ身入りのビジネス=臓器売買だった。ドナーは無戸籍の健康な児童たち、カスタマーは金に糸目をつけない海外の超富裕層たち・・・・

オリンピックを前にホテル不足解消の一翼を担うクルーズ船需要を見込んで、超大型のクルーズ船が建造されていた。そして船内には常駐医師と本格的手術も可能な医療設備を併せ持つ予定だ。東京湾で接岸できる場所は川崎のコンテナターミナル.こちらも受け入れのための整備が急務だった。

征服者たちに滅ぼされたインカ、アステカの王国や文化、風習・・・・いけにえを神に捧げるシーンを織り交ぜながら血で血を洗うような残忍な殺人シーンの描写が繰り返される・・・・
筆者が古来からプロレスファンだったと聞いて納得。

それにしても、こんな作風のものが直木賞に選ばれていたとはちょっと驚きです。
審査員が余程、格闘ものに飢えていたからなのか?南米の文化、風習を絶妙に織り交ぜた作品を斬新と評価したのか?作者本人も一般受けはすると思っていないと語るものの、もし女性が審査員の過半を占めるようだったらどんな評価を下されたのか?引っ掛かりもしなかったのか?

2人を除いて登場人物の全員殺害の結末はともかく、最後にとって付け加えられたような、父親の子供たちに伝えるメッセージのくだりに、もう少し仕掛けが隠されているのかと期待しながら読み終えて、少々ふがいなさを感じたことも正直な気持ちです。

| 10:31 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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